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評価:
畠中 恵
角川グループパブリッシング
¥ 580
(2008-04-25)
Amazonおすすめ度:
幕末の神官
ちょっぴり辛口、でも楽しい
ファンタジーながらに濃いお話
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書店で見つけてラッキーな一冊。文庫派なので、ハードカバー情報は軽くスルーしていました。しゃばけシリーズ以外の作品も書かれているのは知っていましたが、シリーズ外を読むのはこれが初めてです。
小さな神社で神官を務める兄弟。兄は「夢告」が得意だが役に立ったことがない。しかし、ある大きな社の神官から「夢告をして欲しい」との依頼がやってきた。5年前に家事で行方不明になった大店の息子を捜して欲しいというもの。礼金でなんとか神社を補修したい・・そんな気持ちで占いに出向いた先で二人は大きな事件に巻き込まれる。
冒頭、辻斬りに追いかけられるシーンで始まりますが、この時代(江戸です)は、辻斬りがまるで交通事故のような確立でありえることだったんだろうか。行方不明になった子供を捜す夢告が、いつしか辻斬りに追われて逃げる展開に変わるのは結構びっくり。兄弟ふたりの持つのほほんとした雰囲気とは別に、物語がどんどん緊張感溢れてゆくのは予想外でした。
設定もキャラクターもとても面白いけれど、ラスト、とても大風呂敷ひいてしまって大丈夫?という気もするようなしないような。「夢告」をする度に血を吐いたり死にそうになる兄者も、読書中は本当に心配で心配でおどおどしながら読んでいたんですが、今、冷静に振り返るとちょっと面白い。病弱な若旦那に、瀕死で占う神官。健康優良児を絵に描いたような主人公は、作者の好みじゃないのでしょうか(笑)。
この作品、本当に設定は面白いのに、命が尽きそうになる占いだけがとても残念でした。これでは先が持たないではないですか。せっかく良いキャラクターたちなのに、その設定だけで、シリーズ化できないだろうと思えて。これはシリーズで読みたいのになあ。