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評価:
オノ ナツメ
講談社
¥ 690
(2007-12-21)
短編集だから さらっと楽しめる
間と表情
切ないけど優しい物語
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オノ・ナツメ短編集。知らないうちに出ていて、お店で見てびっくり。まあ即買いです。
これまで幾つかあるシリーズとは無関係で、短編集として楽しめるので、オモシロ設定の作品が目立ちました。冒頭の「長靴」と「湖の記憶」は、二作とも父と子の交流をメインに据えた作品ではありますが、設定が面白い。「長靴」は両親が別れて交流のない父のもとに手伝いにやってきた息子。頑ななまでに心を開かない父とそれでも文句ひとつ言わずに働く息子のちょっといい話。純文学のようでした。
一方、「湖の記憶」は忙しい父となかなか一緒にいられない息子のもとに、どこからともなくやってきた客によって、素敵な時間が与えられるもの。その客の正体や目的、父との穏やかな時間すら秘密があるんですが、その設定がまたなんとも言えず素敵なのです。この短編集では一番印象に残った作品。
続く「箱庭」は、娘婿が外国人でなかなか打ち解けられない日本の頑固なお父さんを描いたもの。これも素敵だ。残る3作は外国を舞台に描かれた作品だが、共通するのはなかなか打ち解けられない関係の二人、たとえば仕事のパートナーだったり、上士と部下だったり兄弟だったり。それが誤解が解けて少し歩み寄れる、そんな作品でした。特に最後の「パートナー」はミステリ仕立てで面白い。
びっくりなことにこの本はモーニングKCなのです。「モーニング・ツー」というコミック誌ができたらしく、この本を手に取るまで気がつきませんでした。漫画雑誌はジャンプ以外読んでいないんですが、「モーニング・ツー」は女性の客層をターゲットにした雑誌っぽいので、一度見てみたいかも。