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評価:
北森 鴻
講談社
¥ 560
(2001-12)
香菜里屋に行きたい
「香菜里屋」シリーズ第一弾
グビグビ読ませる
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実は1/14に読了。記憶も危うくなってきましたが、どこまで読後感を思い出せるか・・。
他シリーズで時々登場していた三軒茶屋のビアバー「香菜里屋」、今回はビアバーを舞台に展開されるしっとり落ち着いたミステリー。第52回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門受賞作です。
作品は、6篇の作品からなりますが、どれも共通しているのが、ビアバーでミステリが語られる分、じわじわと感動を味わえる深みだったり、落ち着きだったりが見所でしょうか。冬狐堂のような派手なアクションやバトルはなく、静かにドラマが語られます。
表題作「花の下にて春死なむ」は、孤独なままに亡くなった俳人・片岡草魚の人生を追うもの。最終話の「魚の交わり」も同じ片岡草魚に関するミステリ。もちろんフィクションのキャラクターではありますが、句も彼の人生も、ビアバーで静かに語りたい!というイメージにぴったりでした。
「花の下にて春死なむ」で紹介された句も私のような素人目には魅力的に映るのですが、それ以上に好みだたのが「終の棲み家」という作品。水際にひっそり佇む小屋とそこに住む老夫婦。明らかに違法に建てられ住んでいるのだが、その夫婦とカメラマンとのコミュニケーションが、短いけれど濃い交わりで、長くても疎遠の付き合いが多くなってきた私には新鮮で羨ましいものでした。こういう出会いがしたい、と思えるような作品。
普段であればこの短編集のような、静かで落ち着いた雰囲気の作品は敬遠しがちなんですが、さすがは北森鴻。飽きる暇もなく読めました。おおかた北森作品のシリーズものは読んだきがするので、今度はシリーズ外作品にでも挑戦してみたいです。