|
評価:
北森 鴻
立風書房
---
(1998-09)
のんびりと読みたい1冊
|
文庫で読んだんですが、↑amazonで画像がないのでハードカバー版で。シリーズものではない長編でしたが、予想以上に緻密なミステリでした。
夭折した童謡詩人・樹来たか子を卒論テーマとした女子大生、彼女に出会いその詩人に出会った郷土史家、末期癌に冒された男、彼女の恋人の刑事。樹来たか子の人生を追ううちに連続して人が亡くなり事件が発生する。
ひとりの詩人に魅せられた人々の抱える事情も勿論、それ以上に童謡詩人の死の謎、その子供が聞いた音の謎が非常に魅力的。詩の中で登場する「しゃぼろん、しゃぼろん」と表現された音は何の音なのか。解説によると、樹来たか子のモデルは金子みすゞのよう。確かに共通点は多いものの、金子みすゞの作品をそれほど知らないので、この機に触れてみたいと思いました。音の正体についても馴染みのないものなので、一度は聞いてみたい音です。
さらに、ミステリ部分についても周到で緻密。決して幸せな話ではなかったものの、その結末は衝撃的でした。結末を知るともう一度最初から読み直したくなるような・・。また、作品内に登場した詩も素敵なものだったので、この作家の新たな部分を知ったような感じで、さらにファンになりました。これは、私的ですけど作家オブ・ザ・イヤーですよ。解説の中で、種田山頭火をモデルにした作品もあると知りまして、それを読むのもまた楽しみです。