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評価:
西尾 維新,take
講談社
¥ 1,260
(2006-11-08)
少し読みづらいが面白い
傑作ですね
お祭騒ぎの人間ノック
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人間シリーズ新作です。ファウストは未読なので正真正銘のハジメテ。オマケとしてトレーディングカードが6枚ついていました。内容を見る限り主要メンバーなのでおそらくどの本も同じカードなのかな。
さて、あとがきで作者本人が「意味不明の連中がただただ殺しあっている戦慄の小説」と言っていたのがおもしろい。そう言われてみればそう。殺人鬼集団・零崎一賊のお話ですから。今回の主役は零崎の大将で『愚神礼賛』の釘バッド・零崎軋識。もうひとつ、チームの一員であることは事前に判明していましたが、誰か、というのが肝心なところで。その辺りはネタバレなので書けませんが、まあ、大方の予想通り同じような名前の方でした。しかし、今回の釘バッドは主役度がちょっと薄い感じです。それくらい脇キャラが出張り過ぎです。
ざっと一読した感想が、まず、テンポが悪いこと。西尾維新にしては珍しい。正確にはテンポはほぼ今までどおり良いのだけれど、ポイントポイントでちょっとズレてしまっている。そんな感じです。しかし、言葉の面白さ、話の面白さは健在。冒頭の麦わら帽子と中学生の会話は抜群ですね。今までどおり面白いのになんか違う。違和感がある。その筆頭は竹取山決戦のオチのつけ方でしょう。
人間シリーズ、戯言シリーズの過去にあたる今作。確か事前情報では“殺し名”同士がタッグを組んだ珍しい戦いで、その殺し名を敵に回して戦った萩原子荻ちゃんの話だったような。そして、その大戦の全体像を見通していたのが萩原子荻と零崎双識だけ。みたいな事がどこかで書かれていた気がします。しかし、竹取山決戦は果たして決戦なのか。あれは全体像見通すほどの規模の大戦なのか。人識くんもジグザグの技を身につけるほど接触はしていないし、フラグメントとやらも登場していない。もしかするとこの後に控える『零崎曲識の人間人間』こそがその大戦の話で今作はその前哨戦か。だとすれば違和感もオチの薄さも、あまりに激しくないバトルも頷ける。
竹取山決戦は零崎3人がそれぞれ個人バトルを展開しますが、釘バッドに対したキャラクターが最高ですね。めっちゃ強いよ。嬉しくなってしまいましたよ。この二人は勝ちっぷりも負けっぷりもいっそすがすがしい。対して、零崎双識サン。途中までは最高ですが、オチだけがなんだか取ってつけたような。。もう少しなんとかならなかったのか。人識くんについては文句はありません。あれが必然で当然な展開です。あのクオリティが戯言シリーズ、人間シリーズには必要なのだ、みたいな感じで。
今回は、ファンサービス?というくらい戯言シリーズのキャラが多く登場します。後半に登場する親子は予想外で嬉しくなってしまいました。それぞれ濃いキャラクターが多く登場するので釘バッドの出番、見せ場は少ないわけで。。。。そういえば見せ場あったのかな、釘バッド。魅せてはくれたけれども。釘バッドの表の顔(裏の顔か?)、チームの一員の彼も物凄い強烈でした。いや、本人が強烈なのではなく、死線の蒼との関係が。いーちゃんと玖渚友の関係を考えるとあの落差は凄い。『サイコロジカル』で兎吊木垓輔が評した青ちゃん像は正しかったわけだ。そして、両シリーズ通して一番好きな零崎兄弟。兄は前作からキャラクター変わっていないか。文句なしに変態だろう。前作は涙するほど感動したというのに。しかし、やっぱり大好きです。釘バッドの双識さんへのツッコミが面白かった。今回初登場したのが『少女趣味』零崎曲識。なんだかフツーの人っぽいですけれど、観念的なような自虐的なような。暗そうです。それでも新キャラ登場が一番面白く読めたかな。
何はともあれ、この前読んだ『化物語』よりずっと楽しんで読んだ気が。今作だけ取ってみれば、前作には劣ります。前作『零崎双識の人間試験』は泣けましたし。しかし、今作はなんだか、例えるなら上中下巻の中巻みたいな印象があって、どの話もそれぞれどこかの未来に繋がっていて、次回作がありますよ、みたいな中途半端な部分も多かったので、これだけでは評価ができない。全ては2007年発売?登場?予定の『零崎曲識の人間人間』ですね。とりあえず来春のメフィストに掲載されるそうですが。なぜメフィスト?