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評価:
大倉 崇裕
双葉社
¥ 680
(2005-06)
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ここまでが実は6月読了本。日常ミステリと言えるだろう作品ですが、このジャンルを好む弟が購入していたものを拝借して読書。私だったらきっと買わないだろうと思ったけれど、読んでみたら、買う価値のある作品だと思いました。これはいい。
大学の同窓生が「殺人容疑で追われている」と飛び込んできた事から、元刑事と共に真犯人を捜す事になる第一話「ツール&ストール」、友人の代わりに電柱に広告を貼るバイトをする「サインペインター」、銀行強盗に巻き込まれ、あろうことか犯人と戦う羽目になる「セイフティゾーン」、買ったばかりの携帯にかかってきた間違い電話を無視できずにトラブルに巻き込まれる「トラブルシューター」、リクルートスーツを買いに行ったデパートで万引きの臨時保安員となる「ショップリフター」全5話からなる連作短編集。
主人公であり探偵ポジションは、就職活動中の大学生で“巻き込まれ探偵”の白戸修。存在自体が信じられないくらいのお人好しでどんどん事件に巻き込まれては、成り行きで事件を解決する感じ。解決というよりは仲裁に近いかもしれない。
この作品の面白さは、彼がどれほど酷い目に遭って、そこからどう問題を収拾してゆくかというところ。あとがきで作者が「次は彼をどんな酷い目に遭わせようかと、ニヤニヤしながら考える毎日でした」と書いていたように、とにかく面倒な問題に巻き込まれては酷い目に遭う面白さがウリなのだ。主人公・白戸くんの小市民ぶりがとてもまぶしい。小市民と言えば、米澤穂信の小市民シリーズがまず浮かぶが、小鳩くんが自分に禁じている探偵スタイルを、この白戸くんは堂々と行い、かつ小市民でありうる、小鳩くん、ここに君の理想とする姿があるよ!と思いました。小鳩くんには決して辿り着く事のできないであろうスタイルで探偵をこなす主人公が素敵です。
読書中、誰が書いているんだろうと気になって見てみたら、作者名を見てびっくり。代表作の落語のシリーズも確かに日常ミステリだけれど、「三人目の幽霊」に比べると今作は出来が違う。他の作家だったとしても驚かないかも。なぜか、北森鴻かなと思って読んでいたんですが、よく考えると全然違う。北森鴻だったらもっともっとハードボイルドですね。それが好きなんですけど。