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評価:
森見 登美彦
角川グループパブリッシング
¥ 580
(2008-12-25)
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タイトルから気になってずっと読みたいと思っていたのですが、ようやく文庫化したのを機に購入。想像以上の面白さでした。これは凄い。
サークルの後輩である“黒髪の乙女”に密かに思いを寄せる“先輩”は、なんとか彼女の目に留まるよう、彼女の行く先々に出没しようと奮闘する。しかし、その場で彼と彼女を待ち受けるのは、実に怪しい人々と珍事件の数々。先輩の想いは黒髪の乙女に伝わるのか!?
物語は黒髪の乙女と先輩の2つの視点で語られます。思うままに街を闊歩するキュートで純情な、そして今時いないだろうと思われるくらい世間に疎い黒髪の乙女。対して、彼女の後を追うが度重なる厄災に見舞われる先輩。良からぬ事を考えているからこれほど酷い目に遭うのか、それとも運MAXの彼女のせいで厄災が先輩に降り注ぐのか。そんな彼女と彼の物語が4話収録されていて、長編の形を取ってはいるが短編連作のような印象。
ただの恋愛がテーマの作品であれば読む気はしませんでしたが、これは本当に面白かった。三谷幸喜の喜劇を見るような読後感。様々な登場人物はどこかで繋がって、当初の予定とは全く違った方向へ物語りは走り出し、大山鳴動して鼠一匹みたいな。素敵だ。
特に面白かったのが、黒髪の乙女がその魅力全開に夜の繁華街を蹂躙する第一章「夜は短し歩けよ乙女」、学生ってアホだな、いやアホだったなと懐かしくなるような馬鹿馬鹿しさの第三章「ご都合主義者かく語りき」の二作。表題作は文句もつけようがないくらい、ツカミには勿体ないくらいのクオリティですし、第三章の学園祭は、大学生ならではのカオスっぷりがまた面白いのだ。この世界観、キャラクター達でもっともっと作品を読みたい気がしますが、森見登美彦初読みですし、続きがあるのかないのかもよくわからず。なので既刊を端から読み漁りたい気分です。本当に面白かった。