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評価:
三津田 信三
講談社
(2008-07-15)
うつし世は夢、夜の夢こそ真
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北海道は寒いからもう読書の秋は終わったよ・・と思うようなまさかの大ブレーキ。なぜか読みにくかったのはカバン本にしていたからか。。もともと、ノンフィクションは読まないんですが、ノンフィクションタッチで始まる「ホラー作家の棲む家」改め「忌館」。噂の「厭魅の如き憑くもの」を読みたい一心で頑張って読書しました。読書って頑張るものじゃないですけど、基本的に怖いの苦手ですので・・。この努力は報われるのだろうな。
ホラー作家・三津田信三は、近所で見かけた朽ちた洋館に魅せられ、その家に引越しする。執筆活動は順調に進むが、洋館の秘密を追ううちに・・・。うまく説明できないですが、“幻のデビュー作”と銘うたれた作品。
古い洋館を舞台に小説を書いているうちに、自分が考えていたものとは作品がどんどん違っていって、それが実生活に次第とシンクロしてくる。これは怖いですね。作中作である言人くんバージョンの作品も秀逸なだけにそのシンクロが本当に怖い。また、模型の窓を塞いだら・・みたいなifは長く尾を引きそうな怖さですね。忘れた頃に夢に出そうだ。
諸外国のホラー作品やホラースポットに関する薀蓄も幾つか登場します。ホラーは避けて通っていたジャンルなので、どれも目新しい情報として楽しみましたが、複線だろうということは早い段階でわかってしまいます。でもこの作品の求心力はそこではなく、言人くんはどうなるのか、お兄ちゃんは何者なのか、三津田信三の前にあらわれた女性は何者なのか、作中作と現実世界とのリンクが見どころ。ホラー作品読書歴が薄っぺらい私でも面白く読めました。
余談ですけど、表紙の女性の美白が実は怖いですね。直視に耐えうるのが逆に嫌です。表紙の怖さは島田荘司「龍臥亭事件」(光文社文庫)の方がはるかに怖い。いまだに直視できないです。チラ見すらイヤダ。透明ブックカバーは付けられない、書店の紙のブックカバーをつけたくなるような恐怖絵です。「龍臥亭〜」はホラー小説じゃないんだけどなあ。