|
評価:
三津田 信三
光文社
¥ 600
(2007-07)
サービス精神満点のミステリ・ホラー
夏にピッタリの娯楽ホラー
真夜中に一人で読んでください
|
こんな怖い本読んだの久々ですよ!ホラージャンル自体久しぶりでした。2007年の本ミスで第三位に登場した「厭魅の如き憑くもの」は文庫落ちしたら絶対読もうと思っていたんですが、先にこれを文庫で見つけてしまった。三津田信三さんの作品は、初読みです。
両親が亡くなって、祖母と二人で郊外に引っ越した貢太郎は、初めて訪れた場所にも関わらず過去に訪れたかのような錯覚に襲われる。さらに、彼が住んでいる家では、次々と怪奇現象が発生する。友達になったばかりの礼奈とともに、デジャブと怪異の謎に挑む。
同じ家に住んでいるのに、祖母は何も感じないが、貢太郎にだけ怪異が襲う。何かが家の中を彷徨う音や気配が感じられたり、実際に存在しないはずのものが見えたり、さらには彼自身、何かに襲われたり・・。計り知れない恐怖と戦う12歳。私だったら気が狂ってしまいそうだ。この家ではいったい何があったのか、この町と自分はどんな因縁があるのか。とにかく王道のホラーを久々に読みました。
結末は論理的で、しかし、論理だけでは説明できないような因縁めいたものもあるので、こういう終わり方は嫌いではありません。ただ、誰も足を踏み入れない森。そこがもう少し深く物語の確信に踏み込んだり、社で奉られていたものに対してもっともっと説明があったりしても良かったのになあと思います。消化されずに適当な理由をつけてあっさり流された感じがして、ちょっと残念。
ホラーといえば記憶に残るのが、読了後に怖すぎてつい友達に電話してしまった綾辻行人「殺人鬼」、地に足のついた作品にも関わらず人間の恐怖を徹底的に追及した岩井志麻子「ぼっけえ、きょうてえ」の二作。怖がりなので、基本ホラー読みませんが、トラウマレベルのホラーではないにしても、押入れに隠れて息を殺すような恐怖、何かに怯えて逃げ惑う姿、ヒトではない何かが建物の中に居ると知っていて夜を過ごさなければならない恐怖など、恐怖を増幅させるような設定、演出がありホラー苦手なわたしにはキビシイ描写もありました。ただ、ホラー好きには物足りないのかなあ。先にあげた綾辻行人、岩井志麻子の二作の方が怖かったですし。
「厭魅の如き憑くもの」文庫化を前にして、「ホラー作家の棲む家」を改題して文庫化された「忌館」もゲットしましたので、カバン本の候補作として積読本のラックを温めております。「禍家」を読んだ限り、文体は嫌いじゃなかったので、読むのが楽しみですよ。