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評価:
上橋 菜穂子
新潮社
¥ 580
(2007-12)
夢たちの記憶
夢の中で行き続けることが、人の夢なのだ
豹変しタンダ
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守り人シリーズ第三弾。今回はタンダが大変なことになり、トロガイも大変なことになり、当然、バルサも大変なことになりまして、チャグムまでもが大変な状況に自ら飛び入りするような、新ヨゴ皇国オールスターのような作品でした。ただ、表紙のイラストのような色合いに包まれる作品。
人の夢を糧とするナユグの“花”、かつてトロガイが出会った花は、開花の時期に近づきどんどんその魔力を増してゆく。花に囚われたタンダを救い、正しく開花させるために奔走するトロガイとバルサ。そして謎の歌い手ユグノが全ての鍵を握る。
結局のところ、こいつがああだから皆大変な目に遭うのでは・・みたいなイライラもちょっとありますが、この作品自体が老呪術師トロガイの恋物語のような・・・。まあ綺麗な物語であるのは確かです。
サグとナユグが接する時は必ず大きな衝撃、いや軋轢かもしれない、何か大きなエネルギーが生まれるような気がするのは、既刊を読んでさすがに学習しました。随分と大げさで迷惑な開花で、かつてはトロガイもその開花に出会った事で人生が大きく変わった、そんな過去も語られます。怯えて現実から逃げようとするイノセントな歌い手ユグノが、何を選択するのか、どう変わっていくのかが見どころかもしれませんが、レギュラー陣はそのためにひたすら奔走し、タンダに至っては生命の危機に直面するわけですから、最後まで手に汗握る展開が続き、目が離せません。
一作目に登場した若き星読博士のシュガが、呪術にも関心を寄せ、ひそかにトロガイに師事していたこともシリーズとしては新しい展開。そして、タンダの一大事によって村人と呪術師の人間的な距離を感じた事も新しい発見でした。これからタンダが辿る道のりは本当に苦難の道に見える。まあ、まだシリーズ半ばですので、これから彼らがどういった異界のモノに出会うのかも楽しみです。次の「虚空の旅人」はチャグムですね!!