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評価:
伊坂 幸太郎
角川書店
¥ 620
(2007-06)
ファンになりました
主人公に思う
読みやすく、不思議なキャラ達だった。
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文庫新刊なのになぜ商品画像がないのか、amazon。非常に不満ですが作品自体はとても面白い。伊坂幸太郎の既読作品の中では一番好きです。
亡き妻の復讐相手を目の前で殺害された「鈴木」は復讐を横取りした犯人「押し屋」を追う。自殺専門の殺し屋・鯨は、死者の幻影を清算するため、そしてナイフ使いの殺し屋・蝉は興味半分と自由を求めてそれぞれ「押し屋」を追う。「鈴木」「鯨」「蝉」3人の視点から語られる伊坂版ハードボイルド。
わたしハードボイルド好きなので、個人的には「アヒルと鴨〜」より好きです。この作品には様々な職業の人間が出てきて、皆が追うのは「押し屋」と呼ばれる殺し屋。押し屋を追ったはずの鈴木が会ったのは不思議で魅力的な一家。そこで交わされる会話は伊坂幸太郎ならではの言葉の数々でした。自分はこう思うんだ、という考え方だったり、ちょっとしたエピソードだったりが伊坂作品はすごく面白い。今回の場合は鈴木の妻との出会いや彼女の発した言葉がとても魅力的でした。
「鈴木」「鯨」「蝉」の中で一番惹きつけられたのが人殺しを否定する鯨。「俺が会う奴が、勝手に死んでいくだけだ」うは。かっこいい・・。帯のコピーに「伊坂幸太郎、最大の問題作にして 最強傑作登場!」と書かれてましたが、最強傑作ってなんでしょーね。この“問題作”なのは、鯨や蝉のような殺し屋をかっこよく書いているからなんだろうか。それともこれまでの伊坂幸太郎が書いてきたポップでオシャレな作風とのギャップなのか? 3人目の「蝉」は依頼されれば老若男女問わずに殺す殺し屋。非常に若く、西尾維新が生み出した零崎人識くんのような軽快さを持ち、ファンが出来そうな魅力的なキャラクター。こっちこそ問題な気がするけれど、この彼の思考はいろいろ予想外で面白い。
作品の中でまた伊坂幸太郎のデビュー作をほのめかすくだりがありましたが、出版社違うのになあ。もしかして他作品とのリンクとか楽しめる作家なのでしょうか。案山子の話とのリンクはこれまで気づいたのが2、3作品くらいなのでもっと探せば色んなリンクがあるのかな。
ともあれ、夏の文庫フェア第一弾の伊坂幸太郎はかなりの当たりでした。好き嫌いはあるのかもしれないけれど、エンターテイメントを求める人にはオススメの一冊。