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評価:
舞城 王太郎
講談社
¥ 819
(2004-12-07)
舞城が気になる方へ
舞城入門書(?)
悔しいけど感動。
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相変わらずスピード感があって読みやすい。
版型によって表紙違いますけど、やっぱり新書でしょ。
ラブリーなピンクの熊が目印の本書。
「熊の場所」「バッド男」「ピコーン!」の3話からなる短編集です。
「ピコーン!」の評判はよく聞きますが、何と言っても表題作「熊の場所」、これが一番好きです。ある日同級生のランドセルに入っていた猫のしっぽを見つけてしまった少年。猫殺しの疑惑を持ったまま、同級生に近づきます。尾行して張り込んで・・それは面倒なので一緒に遊びながら仲良くなって近づいて見張る事にした少年。これはアンチではなしにミステリでした。何といってもその子供目線の上手いこと。少学5年生の頃、そのときに感じた事を思い出したり言葉にするのは非常に難しい。それをあっさり書いてくる舞城王太郎が凄い。これってミステリーランドで出版しても何の支障もないのでは。むしろ、これがミステリーランドで出版されたら間違いなく私のベストです。帯に書かれていた「あなたの熊の場所はどこですか?」さあ、そんなものから目を背けて生きてきた私には皆目検討もつきませんが、こどもが父からそんな話を聞いたら結構感動するかも。
「バッド男」は、どうしようもなくすれ違う男女の行く末を友人が一歩引いて見守る話と、自分のバッドで人から殴られ虐待され続ける浮浪者のような男性の事件を描いた話。この作品だけ二段組でした。1話目と3話目が強烈なので印象は薄いけれども。このテの話は最近よく読んでいるような・・。周囲の人間を観察する主人公の目線が、非常に舞城っぽいです。
そして、「ピコーン!」。女版・奈津川四郎ですか、これ。例えば暴走族だったりヤンキーだったりが、いつからか社会の中に紛れてわからなくなってゆく。その変わって行くまさにその時を背景に描いた男女の愛。むしろ女の子の物語でしょうか。語られる内容だったり言葉はかなりキタナイけれど、彼女の真っ直ぐさはとても好ましい。内容もかなりバイオレンスですけれど、このあっけらかんとした舞城王太郎のバイオレンスっぷりは読んでいて気持ち悪くなくてスキです。事件を一気に解決するスピードも行動力も奈津川四郎そのもの。違うのは前向きさと純真さを併せ持っている事かな。「煙か土か食い物」の舞城王太郎に魅せられたのならこのお話はオススメです。