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評価:
貫井 徳郎
講談社
¥ 700
(2003-04)
朱芳の病状が気にかかるー
「美人」に食傷・・・
何となく惹き付けられた作品
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『鬼流殺生祭』に続く維新後のシリーズ第二弾です。
横溝?みたいな印象が否めなかった前作。大して期待せずに読んだのですが、予想以上の面白さでした。
戊辰戦争の傷癒えぬ東京。“今様美女三十六歌仙”と称された錦絵のモデルとなった美女が次々にバラバラ死体で発見される。遺体は体の一部が失われた状態で稲荷に棄てられていた。九条は、常人以上の好奇心で深く事件に関わりになり、名探偵で病床の友人・朱芳も事件解決へ乗り出す。
ワトソン役にとって、超人的とも思える好奇心は必須ですけれども、今回の九条もうそーというフットワークの軽さを発揮して事件にのめり込みます。過剰な好奇心を発揮するワトソン役には最近辟易しているのですが、今回の彼は多少「巻き込まれた」と言い訳が立つような受動的な部分もあったので、そんなに嫌な感じではありませんでした。
それよりも、今回は何といってもバラバラ。その理由が最後の最後の解決編までわからなかった。それが面白かった要素のひとつでもある。そして九条サイドとは別に、喜八郎という元幕臣の視点が面白い。冒頭の屍累々のシーン、ああいうのは結構好きです。それとは別に彼視点の話はかなり楽しめました。「狂人とは理屈(理性だっけ?)以外の全てを失った者だ」みたいなことを最近読んだ島田荘司「切り裂きジャック・百年の孤独」に書かれていたような気がして、なるほどなるほどと思いながら、彼はどこで踏み外したのか、どこから狂ったのか、本当に狂っていたのかなど考えつつ読むと、彼サイドのストーリーが面白さ3割増です。ついでに病弱な朱芳の病気についてもちょっとネタバレっぽく触れてましたし、彼の過去も一部明かされるので、シリーズファン?は嬉しいのかな。
そして、前回はあまり“維新後”という素敵な時代背景を生かし切れない感がありましたが、今回は時代背景抜群。元幕臣が登場したからかな。いや、錦絵や色町の話などが織り交ぜられていたからか、はたまた公家の尊厳とはみたいなことも書かれていたからか。何にしろ、このシリーズをもう少し読みたいかな、という気にさせてくれる作品でした。
途中で登場した、小野不由美風に言うなら“起き上がり”の話が消化されずに終わったなと思ったら、次回作へ続く、ですか。気になるじゃないか。「生ける屍の死」を読んだばかりなので、次に「屍鬼」を再読して“起き上がり”祭りみたいなレビューしようかと思ってたんですが、“起き上がり”ネタが次回作ならできませんね。この九条と朱芳の続編出てるのかな。