ながし読み日誌

文庫で読書。最近はハードボイルドに傾倒気味です。。
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2010.04.07 Wednesday | posted by スポンサードリンク
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殺人症候群/貫井徳郎

評価:
貫井 徳郎
双葉社
¥ 1,000
(2005-06)
三作を順に読んでこそ
復讐とは
重くて、辛くて、切ない痛み

症候群三部作の三作目。どうレビュー書けばいいんでしょう。想像を絶する物語でした。必殺VS必殺だけれども、もったいないような・・。どうして作者はあれをこうしてしまったんだ、みたいな歯がゆさが残ります。

まず、今回はそれぞれのテーマが重い。理不尽に家族を奪われて、奪った人間は例えば少年法等に守られ数年で社会復帰。仕事や私財など全てをなげうって裁判で勝ったとしても結局は賠償金すら受け取れない。そんな犯罪による被害者たちの代わりに、犯人を始末する殺人代行みたいな人間がいる。それを追うのが今回の環チームの仕事のようです。一方、心臓移植しか残された道のない息子のために、やってはいけない事に手を染める母親。何が正義なのか誰が正しいのか、彼ら彼女らは本当に間違っているのか、そんな事を考えさせられる作品。

一方で、このテーマの重苦しさを緩和するのは、チームが事件を追うのと同時に複数のストーリーが進行していて、謎の答えに辿り着いたらまた謎がある、みたいに読者を飽きさせない作りではありました。テーマのわりに読みやすさは抜群。

以前読んだ「妖奇切断譜」でも実は感じたのですが、この作家さんは人が暴行を受けるシーンや遺体の様子、残虐なシーンを本当に上手く書かれているように思います。ミステリではよくあるバタバタ人が亡くなる連続殺人事件のような軽さはなく、ホラー小説のようにえげつないまでのしつこい描写があるわけでもなく、本当に淡々としかしリアリティがある書き方をされていて不思議。人が亡くなるという事の重みを作品内でしっかり表現されていて、「慟哭」以来、貫井徳郎という作家のファンになりました。さらに、途中で「あなたの恨みはらします」みたいなセリフがあってちょっと笑いました。

しかし、結末は予想していたものと大きく違って、何でこういう結末を選んだのかなとか、この人もこういう判断しかできないのかなとかやりきれなさがいっぱいで、決して結末に満足とは言えない。作品には満足なんだけど、彼のようなキャラクター大好きなんですよう。名前をあげられないのが残念ですけど。救う術が一切ないくらいの絶望とか、後戻りできないくらいの孤独、決心、そんなものは信じたくないです。そういう意味で環さんの決断にやるせなさを感じてしまいました。ラストシーン、居酒屋から出た後輩に目撃させるような、あんな演出は正直いらない。いや作品としてはあるべきなんですが、個人的な思い入れで。。作品のテーマそれぞれが、神や仏なんて存在しない、この世は理不尽なことばかり、みたいに不幸のどん底に突き落とされた人たちの話なので、どこかに救いが欲しかったかも。
2006.12.22 Friday 23:03 | posted by ソラチ
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誘拐症候群/貫井徳郎

評価:
貫井 徳郎
双葉社
---
(1998-03)
キャラクター
スリリングな展開♪
第1弾よりパワーアップ

面白くて立て続けに読んでしまいました、症候群三部作の第二話「誘拐症候群」です。本当にチームもの、必殺系は面白いですよー。

身代金が500万、700万などギリギリ支払いできる金額に定めた小口誘拐。こどもはしっかり帰ってくるし警察に知らせたら二度目はないとの脅し。あまりにも完璧な誘拐事件は何度目かにして事後に発覚。しかし、考え抜かれた計画は到底首謀者へ辿り着けるものではなかった。

今回は、托鉢僧の武藤メインでストーリーが進みます。もちろん他の3人も登場しますけど、ややチームの仕事というよりは武藤の事件が主軸のような。武藤というキャラクター、前作を読む限り無駄口は叩かず、しかし聡明な印象を受けましたが、今回では非常に人間らしい感情の篭った描写が多く、イメージがちょっと変わって残念。もっともっと感情を殺すようなキャラクターだと思っていたので。

物語は托鉢僧である武藤が関わる誘拐事件と、小口で巧妙な誘拐事件の双方から展開します。その巧妙さは緻密で丁寧に書かれていてリアル。誘拐ネタだけでは岡嶋二人「99%の誘拐」より楽しめた感じ。ただ、オチがどちらも結構イヤでした。武藤さんサイドのオチ、つまり大オチは当初からそうではないかなと思っていた内容だけれども結末にはびっくり。そこまでする必要があったのか、いやあったのだと思ったり思わなかったり。そしてチームによる騙しの方のオチも、あれって犯罪だし、本当にいいのかよ、みたいな部分が強くあって全力では楽しめない。まあ、冒頭部分のティッシュ配りの青年と托鉢僧との出会いや関係は非常に良かったのでそれだけでもモトが取れた気はしますけど。

前作は探偵が、今回は坊主をメインに書かれていましたが、三作目は肉体労働者メインかな。環さんに関しては書かれないのかな。大森望さんの解説によると三作目「殺人症候群」は、さながら必殺VS必殺、スパイ大作戦VS必殺仕事人の様相らしいのでこれまた楽しみです。文庫はちょっと躊躇したくなるような厚さですけど読みますよー。
2006.12.20 Wednesday 22:48 | posted by ソラチ
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失踪症候群/貫井徳郎

評価:
貫井 徳郎
双葉社
¥ 650
(1998-03)
砂の果実
まるでスパイ映画
症候群シリーズ第1作

岡嶋二人「眠れる夜の殺人」が元ネタとも言われている症候群三部作の第一作目です。必殺系の話と知って読む気になりました。なるほど、おもしろい。

若者の失踪事件を秘密裏に追って欲しい、そんな依頼を受け捜査を開始するチーム。警察機関とは異なり、ボスである環は警務部人事二課、メンバーは肉体労働者に托鉢僧そして探偵である。何の変哲もない、事件性にも乏しい若者たちの失踪にはわずかながら共通点があり、それがボスの琴線に触れた、そんな感じで始まる物語はやがて恐喝、誘拐、殺人事件へと発展する。

最初に提示された謎をチームで追っていくというスタイルも、明かされ過ぎないメンバーそれぞれの過去や内面もミステリーで魅力的。必殺でなければスパイ大作戦か。メンバーに使令を下すのは寡黙で落ち着いた威圧感のある環啓吾という男。年齢も経歴も謎。しかし警察機関所属?不思議なボスと彼に従い手足となり時には体を張って謎に挑むメンバーたち。純粋に金の為だけとは言い切れず不思議な感じ。彼らが一体何なのか謎のまま第一作は完結するので続編が気になって気になって。。。

ただひとつ難を言うなら、頑張るお父さん系の話は結構苦手です。飽きてしまって。特に貫井作品には、道を踏み外したコドモが犯罪に手を染めお父さんが家族の信頼を取り戻すために頑張る話が多いような気がする。それほど数を読んでいないので思い込みかもしれませんが、このテの設定は最近多く読んでいるので正直おなかいっぱいです。ただ、チームで事件を追う魅力、スピード感は抜群。

読了後に速攻「誘拐症候群」「殺人症候群」買って来てしまいました。クリスマスまでにジェフリー・ディーバーの「クリスマス・プレゼント」を読んで、年末には文庫3冊にも及ぶ「アラビア夜の種族」を、という読書計画が台無しです。症候群三部作を読んで「眠れぬ夜の殺人」を読んで、さらに同じ必殺系の京極夏彦「巷説百物語」シリーズに手を出しそうな勢いです。
2006.12.20 Wednesday 14:38 | posted by ソラチ
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妖奇切断譜/貫井徳郎

評価:
貫井 徳郎
講談社
¥ 700
(2003-04)
朱芳の病状が気にかかるー
「美人」に食傷・・・
何となく惹き付けられた作品

『鬼流殺生祭』に続く維新後のシリーズ第二弾です。
横溝?みたいな印象が否めなかった前作。大して期待せずに読んだのですが、予想以上の面白さでした。

戊辰戦争の傷癒えぬ東京。“今様美女三十六歌仙”と称された錦絵のモデルとなった美女が次々にバラバラ死体で発見される。遺体は体の一部が失われた状態で稲荷に棄てられていた。九条は、常人以上の好奇心で深く事件に関わりになり、名探偵で病床の友人・朱芳も事件解決へ乗り出す。

ワトソン役にとって、超人的とも思える好奇心は必須ですけれども、今回の九条もうそーというフットワークの軽さを発揮して事件にのめり込みます。過剰な好奇心を発揮するワトソン役には最近辟易しているのですが、今回の彼は多少「巻き込まれた」と言い訳が立つような受動的な部分もあったので、そんなに嫌な感じではありませんでした。

それよりも、今回は何といってもバラバラ。その理由が最後の最後の解決編までわからなかった。それが面白かった要素のひとつでもある。そして九条サイドとは別に、喜八郎という元幕臣の視点が面白い。冒頭の屍累々のシーン、ああいうのは結構好きです。それとは別に彼視点の話はかなり楽しめました。「狂人とは理屈(理性だっけ?)以外の全てを失った者だ」みたいなことを最近読んだ島田荘司「切り裂きジャック・百年の孤独」に書かれていたような気がして、なるほどなるほどと思いながら、彼はどこで踏み外したのか、どこから狂ったのか、本当に狂っていたのかなど考えつつ読むと、彼サイドのストーリーが面白さ3割増です。ついでに病弱な朱芳の病気についてもちょっとネタバレっぽく触れてましたし、彼の過去も一部明かされるので、シリーズファン?は嬉しいのかな。

そして、前回はあまり“維新後”という素敵な時代背景を生かし切れない感がありましたが、今回は時代背景抜群。元幕臣が登場したからかな。いや、錦絵や色町の話などが織り交ぜられていたからか、はたまた公家の尊厳とはみたいなことも書かれていたからか。何にしろ、このシリーズをもう少し読みたいかな、という気にさせてくれる作品でした。

途中で登場した、小野不由美風に言うなら“起き上がり”の話が消化されずに終わったなと思ったら、次回作へ続く、ですか。気になるじゃないか。「生ける屍の死」を読んだばかりなので、次に「屍鬼」を再読して“起き上がり”祭りみたいなレビューしようかと思ってたんですが、“起き上がり”ネタが次回作ならできませんね。この九条と朱芳の続編出てるのかな。
2006.11.26 Sunday 22:53 | posted by ソラチ
・ 貫井徳郎 | permalink | comments(2) | trackbacks(3)

プリズム/貫井徳郎

評価:
貫井 徳郎
東京創元社
¥ 700
(2003-01)
結末なき結末とでもいうのか
『慟哭』から派生した新機軸の小説です。
藪の中

若くて美人で優しい小学校の先生が亡くなった。死因はアンティークの置時計で頭部を強打したためで、家には窓からの侵入の形跡が見られ、睡眠薬入りのチョコレートも発見される。明らかに他人の介入が予想される死だった。その突然の死の謎を追う様々な人々を描いたミステリ。

先生の死に衝撃を受けたクラスの子供を始め、同僚の女性教師、元恋人、父兄と様々な人間が彼女の死を推理する。ひとつの事件も複数の人間の目から見ると全く別のように映ることからプリズムなのかな?冷静に考えると、持てる情報はそれぞれ異なるので辿り着く結論も違って当然。亡くなった女性は、子供にとっては優しい先生、同僚にとっては密かな嫉妬羨望の対象、元恋人にとっては逆らい難い女王様、現恋人にとってはめまぐるしく変わるプリズムのような魅力的な女性。ひとりの人間がそれぞれの立場によって全く異なる人間に書かれていて、結果導き出される推論もなかなか楽しめました。

“オチが書かれない”話は消化不良で好きじゃないんですが、これはそこまで否定的な印象は受けませんでした。こういうのもありかなと。それだけ、それぞれの人たちの推理の過程が面白かったのかなと思います。この作品は全ての推理を読む読者には事実に進む道が残されているのかな。全部読んでいる読者にだけわかるという印象ではなかったのですが。解決編があるなら読みたいですけど、なくてもいいやという感じ。

最初子供目線からスタートしますが、子供目線で小説を書くのって難しそうです。倉知淳は抜群に上手かった気がしますが、どうしても自分の子供の頃のような言葉だったり子供社会だったりを書くしかないので。今作も少し古い時代の子供という印象が少しありました。一方で、作品中に若い女性の日記があるのですが、その日記の書き方がすごくそれっぽくてわざとらしくなくてびっくりです。

あとがきでは、こういうスタイルの有名な小説を幾つか挙げられていましたが、何ひとつ既読のものはありませんでした。ポー、泡坂妻夫、チェスタトン、デクスター。さすがにブラウン神父は少しだけ読んだ記憶がありますけど、オールド・ミステリを読みつくしているとまた違う感想が持てるのでしょうか。「誰が犯人だったか忘れてしまう」というデクスターは読んでみたい。
2006.10.18 Wednesday 10:38 | posted by ソラチ
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鬼流殺生祭/貫井徳郎

評価:
貫井 徳郎
講談社
¥ 730
(2002-06)
楽しめました
ふくらませすぎかな・・・
ネタはいいのに調理法がまずい。

whodunit、howdunit、whydunitの3コンボ。だけれど満塁のまま3アウトという感じでしょうか。キャラクターがすごく良かった。

維新の風吹く新しい時代。宮家の出の青年が、友人とその許嫁の美女に乞われ旧家に降りかかる凄惨な事件に関わってゆく。2時間サスペンスを、貫井徳郎という作家の筆力で佳作に仕上げた印象。

部外者へのあからさまな嫌悪、深入りするなという友人の助言よりも、好奇心が勝ってしまうワトソン精神が素敵。決してありきたりなミステリというわけでなく、描かれた時代やうっすらと道に積もる雪、武家下屋敷という舞台、ミステリ好きであればそわそわするようなシチュエーション。情景が目に浮かぶような作品。時代やキャラクターが魅力的だったので、ぜひシリーズで読みたい。
2006.06.13 Tuesday 20:05 | posted by ソラチ
・ 貫井徳郎 | permalink | comments(3) | trackbacks(1)

天使の屍/貫井徳郎

評価:
貫井 徳郎
角川書店
¥ 600
(2000-05)
イマイチだけど凄い本
同じ中二として……
思わず目を背けたくなるが、ぜひ皆さんに読んでほしい傑作!

「自殺する奴なんて馬鹿だよ」そんな話をした直後に息子が転落事故死し、部屋からは遺書が発見される。息子が自殺するはずなんかない――と、父親が息子の近況・身辺の調査を開始する。

岡嶋二人の「チョコレートゲーム」も、息子の突然の死に疑問を抱いてお父さんが頑張る話でした。このテの話は苦手です。親の目線、まして父親の視点は身近じゃないからでしょう。苦手意識もあるからか、イマイチ話にのめり込めなかった。

息子の死の真相を究明するという目的を持つことによって、死のショックから抜け出し、理性的に調査を開始する姿は、数ある「頑張るお父さん」系の話の中でも違和感がなく好感が持てます。「チョコレートゲーム」より良かったかな。

担任の先生が訪ねてくるシーンが一番印象的。
あれほど聡明な先生が、動揺していたとはいえその後も何度も電話をかけてくるのが少し不自然。
2006.04.14 Friday 02:11 | posted by ソラチ
・ 貫井徳郎 | permalink | comments(0) | trackbacks(1)

慟哭/貫井徳郎

評価:
貫井 徳郎
東京創元社
¥ 780
(1999-03)
非お勧め。
慟哭のメロディー
冷たい印象

ミステリ万歳!

文句なしに最高のミステリ。この作品を今まで知らずにいたことが悔やまれる。↑Amazonレビューの"非お勧め"の意味が理解できない。途中でネタがわかっちゃったのか、似たようなスタイルの話を知っていたのか。この手の作品は騙された方が楽しい。

すれ違う人、楽しく笑いあう若者を嫌悪するほど絶望のどん底にいる男が、新興宗教へ嵌まってゆく姿、そして、連続幼女誘拐事件の捜査がままならず、キャリアであることの風当たりや事件が難航するにつれて内部から、メディアから受けるストレスに面してゆく捜査一課長が本当にうまく書かれています。特に宗教に嵌まっていく過程、そしてその理由が興味深い。最後までテンションが落ちず、中だるみもなく、ストレートに読めました。

本当に面白い。これだけ上質なミステリは久々に読みました。
やっぱりミステリは面白い、これだからミステリはやめられない、読み終わった後に本を閉じて想いにひたりたくなるような、そんな読後感です。読後、これは慟哭だ、それ以外にない、と誰もが断言するでしょう。
2006.03.06 Monday 07:20 | posted by ソラチ
・ 貫井徳郎 | permalink | comments(4) | trackbacks(2)
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