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評価:
平山 夢明
光文社
¥ 600
(2009-01-08)
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このミス2007一位の作品がようやく文庫化されました!!思えば、この年2位の佐々木譲『制服捜査』も新刊でゲットしたばかりですし、同じ年に発表された『まほろ駅前多田便利軒』や『ストロベリーナイト』も文庫化されたばかり。ということは、ずっとずっと読みたい道尾秀介『シャドウ』もそろそろか!?
さて、待ちに待った今作は「ニコチンと少年―乞食と老婆」「オメガの聖餐」「無垢の祈り」「オペラントの肖像」「卵男」「すまじき熱帯」「独白するユニバーサル横メルカトル」「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」の全8話の異色短編集。
どれも強烈ですが、最大のインパクトは「オメガの聖餐」「独白するユニバーサル横メルカトル」の二作。ヤクザが死体の始末に囲っている体重400kを超える大男・オメガ、彼の世話をすることになった主人公は、オメガと話すうちに、彼の叡智に魅せられる。暴力的な描写もあるが、それ以上にオメガという存在が面白い。知性を得る手段というのがまあ幻想的ではあるけれど、主人公とオメガの交流ともいうべきやり取りは、物語の背景た内容とは裏腹に魅力的なものだった。
そして表題作「独白するユニバーサル横メルカトル」、長年タクシーの運転手に仕えてきた古地図の独白。執事のような語り口調に、地図であることの誇りや美意識を持って仕事にのぞむ姿?が面白い。そしてしっかりミステリな所と、オチが素晴らしい。タイトルから内容はある程度想像していたけれど、これほどの完成度だとは思ってもみませんでした。ホラーだろうけれど、ホラーが苦手でも読める作品。
また、「オペラントの肖像」は、ヒトが支配され思想すら教育・管理されるSF世界の物語。中世の魔女狩りのような異端者狩りに身を置く主人公の物語で設定・展開ともに好みな作品でした。これは長編で読みたいかな。続く「卵男」も、「オペラントの肖像」と同名のキャラクターが登場するんですが、同じ世界観なのか。こちらはシリアルキラーの物語です。アニメ化もされているらしい。
全編通して残酷な描写や暴力的な表現もあるので、誰にでもオススメというわけではないが、普段読んでいる本とは違った作品を読みたい・・なんて時に良いかなと思います。読後に、連想した作品があって、タイトルも忘れたし本で読んだのか映像で見たのかも忘れたけれど、何かに追われて教会に逃げ込んできた男が、そこでプラネタリウムのような星空を見て演奏を聴くような作品がどこかであって、なぜかその作品を思い出しました。もしかしたら共通項があるのかもしれない。読後感はそれほど酷いものではないので、本スキーならぜひ。