|
評価:
島本 理生
角川書店
¥ 1,470
(2005-02-28)
恋愛小説らしい
面白かったよ?
たいした事ないことをおもしろくかける人
|
発売された当初から、
角川の特設WEBサイトを見た時から、ずっとずっと読みたくて、文庫化を待ったけれど、2年も待ってようやく待ちきれずに買いました。もう少し待てば文庫化されるんだろうけど。。。
恋愛小説はこれまで5本の指で足りるくらいしか読んだことがなく、他人の恋バナなんてどうでもいいだろう、とどこかでタカをくくっていた部分もあったのですが、プロローグのセリフから一気にやられました。ネタバレになるので書けないけれど、書きたいなあ。。4ページ後半のセリフです。その言葉に大きく共感しました。本編が始まる前から心奪われて読んだ作品は本当にこれ以上ないってくらい正統な恋愛小説だった。
演劇部の後輩の卒業公演に参加することになった泉は母校を訪れ葉山先生に再会する。ずっとかかえていた想いを抑えて卒業したはずなのに、部活の練習を通して会ううちに、先生への想いが募ってゆく。
恋愛小説の評価なんて、きっとどこまで主人公に共感できるか、またはどれだけその恋に憧れる事ができるのかなんでしょうが、この作品は泉と葉山先生を通して、自分の過去の思い出を見ているような、そんな感じでのめりこめました。共感できなかったらきっと辛い評価になるのかもしれません。
冷静に考えると、葉山先生にも泉にも苛々しながら、なんでこうストレートに行かないんだ!!と思う部分もすごくある。例えば妻も愛人もいる男性が二人とも同じくらい好きなんだ、と言うのを傍から眺めるような、そんな嫌悪感も実はある。ただ、恋愛中の主人公の想いだったり言動がとてもリアルで、キャラクターよりも言葉、情景が残る作品だった。それくらいキャラクターの個性は重視せずに読んでしまった感じ。
カドカワのサイトで著者が「ずっと心に残る恋なら、過去ですら終わったことではないのだと感じてもらえたらうれしいです」と仰っていましたが、そのとおりでした。彼ら彼女らの選択には、賛否あるだろうけれど、あの選択でいいんだとわたしは思います。葉山先生のような男性とは絶対に幸せになれないだろうけれど、思わせぶりな、あんなこんな出来事があったら泉でなくても恋するはず。ただ、幸せにはなれないだろうなあ。
小川洋子さんの紹介文「封印したはずのあの痛みを、よみがえらせてしまう小説」、この作品をいいと感じるひとはきっと、この作品の後ろに自分の恋愛だったり思い出だったりを見ているんだろうな。懐かしい思いをさせてもらって十分に堪能したので恋愛小説はしばらくいいや。やっぱり、血みどろのミステリだったり、歯の浮くようなセリフが飛び交うハードボイルドの方が好きだ。