ながし読み日誌

文庫で読書。最近はハードボイルドに傾倒気味です。。
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2010.04.07 Wednesday | posted by スポンサードリンク
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いたいけな瞳 2/吉野朔実

評価:
吉野 朔実
集英社
---
(1991-11)
小学館文庫で読んだのですが、集英社版だとamazonで画像があるのでこちらで。収録作品とか違ったらごめんなさい。しかもamazonレビューがないわ。というわけで吉野朔実傑作短編集「いたいけな瞳」第二巻です。今回は恋愛に関するお話が多いみたい。ちょっと残念だけど、吉野ワールド全開なのでまあいい。しかも表紙以外は相変わらず古い絵なので随分と前の作品なのでしょう。時代はあえて確認するまい。

第一話「橡(つるばみ)」は親の再婚により年齢の近いしかも多感な時期の男女が兄妹になってしまう。メインはまあ互いがどう思っているかという心の動きなんでしょうが、この話の結末は吉野朔実の作品では比較的多く見られる終わりで嫌いではない。現実はこんなものだ、実際にそんな常識はずれな展開にはならないものなのだ、と嫌というほど現実をつきつけられる。本当にこういうドライなストーリー展開は嫌いじゃないです。夢はないですが。

第二話「Give Me Shellter」、実はよくわからなかったんですねえ。どこまでが現実でどこまでが本当なのだ。これ、岡嶋二人の名作「クラインの壺」からヒントを得た作品ならば面白いなあと思いながら読みました。実際にはそんなことないんでしょうけど、クライン〜のラストシーンが、今作のシェルターの中から空を見上げる様子と近いイメージがあったもので。

第三話「ささやかな不幸」は結婚式途中に暴かれる色んな秘密や色んな関係。それはもう渡る世間は鬼ばかり並みに激しいドラマ展開でした。何も結婚式当日にここまで滅茶苦茶な事にならなくてもいいのにな。第四話「ローズ・フレークス」は学校の先生が自分の姉と結婚してしまった。そんな現実に戸惑う女子高生の想いを描いた話。第五話「本物の贋物」は、妊娠したと主張する弟と贋作を描き続ける姉の物語。もっともっと重い話にできそうだが、実のところ重い話なんだろうけれど、吉野朔実の手にかかればクールに読めるわけで。意外と楽しめました。

最後は、一応ミステリにカテゴリされるのか。ホラーなのか。ある作家が、友人を殺害してその作品を奪う「月の桂」。まあ、ストーリー展開だけ追えばありきたりな作品なのかもしれないが、紡がれる言葉、使われる例え、そしてこころの移り変わり全てが吉野朔実ならではの不思議さ、クールさでまあいい感じなのです。幻想的なミステリを吉野朔実の手によって漫画化されたら絶対売れるだろうなあとも思いました。ここまで有名作家だとオリジナルで勝負するのでしょうが、原作・有名作家、画・吉野朔実のようなコラボレーションも楽しみたいなあ。
2007.06.06 Wednesday 01:06 | posted by ソラチ
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いたいけな瞳 (1)/吉野朔実

評価:
吉野 朔実
小学館
¥ 610
(2004-09)
Amazonおすすめ度:
いろんな人に読ませたい
危うい均衡
1回目よりも2回目
全5巻なんですが、実は短編集でした。読むまで知らなかった〜。しかも結構初期の頃の絵なので、先日読んだ「ぼくだけが知っている」より昔の作品なんでしょう。商品画像がないですが、小学館文庫版では表紙のイラストは描き直されている様子。最近の絵ですし。

さて、今回は7話の短編です。一番印象的だったのが「幼女誘拐」。幼い少女の日常を描いただけの作品ですが繰り返しの効果だったり暗喩のような描写だったりが織り交ぜられていて本当にクオリティが高い。夜が怖いという場面があるが、これは「ぼくだけが知っている」の主人公らいちの夢が怖いというのに通じていて、もしかしたら幼い頃の作者自身の印象なのかもしれない。この話大好きですね。これだけでこの本を買った価値がありました。

第一話は、デートで彼女を待つ間の男の子の思いを描いた「ラブレター」、これは超短編です。短編集のプロローグみたいな感じ。プロローグで可愛くあまい恋愛を描いた話なのかなあと思わせてこの直後に「幼女誘拐」を持ってくるのが凄いですね。吉野朔実はそんなにあまっちょろい作家ではないんだぞう、というのを2話目にして知らしめるような。公園で目を瞑ってセロを弾く女性。彼女に弾かれて公園に通うようになった青年の日常を描いた「愛の名のもとに」が第三話。イスラム教徒たちが素敵なアクセント。駅で投身自殺をしようとした女性と止める男性。ふたりの出会いを描いた「自殺の心得」、テロリストに誘拐されてしまって少年の「愛が怖くてテロが出来るか」、少女漫画家の苦悩を描いた「少女漫画家の瞳には三等星の星が光る」、これは作家の想いを描いたおまけ的作品なのか。第六話の「おとうさんといっしょ」はおじさんが主人公の不思議な話でした。きっとマタニティブルーの父親版なんだろうか。吉野朔実らしい作品だけれどもハードさを少し抑えた大人な物語でした。

全7話、どんなに激しい好みの人でもどれか気になる作品はあるはず。私にとっては「幼女誘拐」が構成もストーリーもイラストも完璧だった。こういう作品を読みたいんですね。短編集と聞いて俄然2巻が読みたくなってきた。1冊に1話でも心に響く作品があればそれで満足。
2007.06.02 Saturday 23:11 | posted by ソラチ
・ 吉野朔実 | permalink | comments(0) | trackbacks(0)

ぼくだけが知っている/吉野朔実

amazonでリンクがなかったのにちょっとむかつきますが、あまりにも好き過ぎて思わず“吉野朔実”カテゴリ作ってしまいました。前も書いたけど吉野朔実の作品はもう漫画だとか小説だとかそんな媒体の壁を越えて傑作なのです。今まで読んできた数々の小説よりももしかするとずっと好きかもしれない。コミックだから・・なんて敬遠する人がもし居るなら本当にもったいない。という私もコミックはわりと苦手で、コミックカテゴリに全てまとめてしまっていたのですが、もう吉野朔実だけは別格だからいいやー。

今回の「ぼくだけが知っている」という作品には実はちょっとした思い入れがありまして。その昔、小学生の頃は“りぼん”というコミック誌を、中学生、高校生になってからは別マをよく読んでいましたが、小学生だったか中学生だったか、ちょっと背伸びをしたくて手に取った“ぶーけ”というコミック誌に連載されていたのを記憶しています。子供が主人公なのになんだかとても大人の読み物のような印象があって敬遠していました。「恋愛的瞬間」で再び吉野朔実に出会うまで思い出しもしなかったんですが、今回ふたたび手に取った本書は、やっぱり大人のためのコミックでした。

小学4年生の夏目礼智。主人公の彼は顔がすごく可愛いくおとなしい男の子。成績は下の下だけれど天気や地震予報は確実で、空を見るのが好き。雷が好き。天災が好き。多感な彼が嫌でしょうがないクラス替えのある新学期、クラスメイトになった面々は本当に個性的な問題児ばかりだった。彼と彼をとりまくクラスメイトの日常の物語。

小学4年生の日常を描いた物語の何が面白いんだと思うかもしれないが、これは別に小学校が舞台ではなくても、中学校でも、高校でも、大学でも、もしかしたら会社でも全く同じ印象で読めただろう。ただ主人公に愛らしい小学4年生の少年を据えた所がまたポイントで、きっと正直でまっすぐな子供だからこそ個性が満点、全開で、大人の社会がデフォルメされているようでわかりやすい。

日常の様々なドラマを描いた作品は数あるが吉野朔実の作品の一番の特長は、クールでドライな作風だろう。物語の終わりには温かさと共にささやかな毒も含まれている。その毒に魅せられて吉野朔実が読みたくてしょうがないんだけれど。作品の中で描かれる題材は例えば係を決めたり、班を決めたり、ラブレターにまつわる話だったり、いじめっ子の話だったり、いじめられっ子の話だったり。しかし、この作品に登場する子供たちは皆自分の足でしっかり立っていて群れてひとりを苛めるような事はあまりない。小学4年生という幼さだからかそれとも作家のポリシーだからなのか。不名誉な噂で泣きそうになっても次の瞬間には一緒に騒いでいるような、今の子供からみると考えられないようなあっけらかんとした子供社会。作家自身がそういう子供時代を送ってきたのかそれとも理想に近い現実を書いたものなのかわからないけれど素敵です。ちなみにコミック文庫で全3巻。これで終わり?みたいな終わりなのでもっともっと彼ら彼女らの話が読みたい。
2007.06.01 Friday 00:32 | posted by ソラチ
・ 吉野朔実 | permalink | comments(0) | trackbacks(0)

記憶の技法/吉野朔実

評価:
吉野 朔実
小学館
(2002-10)
正直あまり目新しくないというか…
吉野ワールド入門書としてぜひ
本当の自分探しってこういうこと
例えば本当に好きな作家の作品を読んだら、何を読んでもどんな文章でも感動してしまう事が稀にあるように、吉野朔実作品はもう本当にたまりません。大好きだー。この作家さんに出会えた事が奇跡のよう。初めて読んだ「恋愛的瞬間」であれほど感動したのになぜこれまで読み続けて来なかったのか不思議。

このブログを始めた当初は、小説の感想のみを記事にしようと決めていて、コミックは載せる気全然なかったのですが、今ではゲームやら何やらテキトーなブログになってしまいました。それでも、仮に初志貫徹し小説のレビューオンリーサイトだったとしても吉野朔実作品は記事にしたい。コミックだとか小説だとかメディアを超越しています。それくらい好きでたまらない作品群。小学館文庫で7作品収録。

まずは表題作「記憶の技法」これは中編です。ひょんな事から自分は両親の本当の子供ではないのではないかと考えるようになった少女。親にも聞けず自分は本当はどこの誰なのか探すための旅に出るお話。ジャンルで言えばミステリ。両親と血のつながりがないかもしれないなんて相当な衝撃である筈なのに両親に当たり散らす事もなく、しっかり前を見据える少女が格好いい。吉野作品に登場する主人公の女の子は大抵、地に足をつけて、言葉少なく、先をしっかり見据える。本当に格好いいのだ。

第二話「霜柱の森」は「記憶の技法」に登場した怜くんの子供の頃のお話。朝、一番に誰も踏みつけていない霜柱を踏んで登校するのが好きな怜くんの、トラウマになりそうな少年時代の出来事。夢に毎晩あらわれるオレンジの女性の話「アンナ・O」、私のためにみんな死んでしまえばいいのに・・と日々想う女の子の「女子高生殺人日記」、自殺した彼女を前にした男性に天使が現れる「粉ミルク」、愛してやまない彼本当は誰なのか「透明人間の失踪」、振られて自暴自棄になる青年に対して家族が放った言葉たち「恋愛家族」極上の小品集です。

一環してサスペンス性がある話が多いのにそんな感じを見せない淡白なストーリー展開が本当に効果的です。役に立たないのは私だ、と思った後のラストシーンが様々な言葉を投げかけてくる「女子高生殺人日記」がかなりお気に入り。後半の短編は本当に無駄な言葉がほとんどない。シーンひとつで感じさせる絵師の腕っ節が見事です。

吉野朔実の作品を読むといつも思うのが、この作品群が小説だったらということ。メディアミックスは基本的に好きではないけれど、ノベライズを求めたくなるような作家です。印象として近いのは、森博嗣の短編集をストイックにした感じ、または江國香織の作品をよりクールでドライにした感じだろうか。うまく説明できないけれど、ミステリや短編好きな方にはぜひ読んでみていただきたい作品でした。
2007.03.11 Sunday 02:08 | posted by ソラチ
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グールドを聴きながら/吉野朔実

評価:
吉野 朔実
小学館
¥ 620
(2006-01-14)
Amazonおすすめ度:
表題(グールド)に惹かれて買いましたが
人生の早いときに出会っておくべき作品
残酷な美しい鏡に嫉妬する
ああもう、本当に大好きな漫画家さんです。普段あまり漫画読まないので吉野朔実の作品がどれだけ世に出ているのかわからないのですが、今回は正真正銘の衝動買い。これを機に彼女の作品をしばらく買い続けたくなります。いや、買い続けよう。ああ、ほんとスキだ。

小学館文庫で購入しましたが、短編で収録されている作品が7つ。美しい同級生との出会いから始まる表題作「グールドを聴きながら」、同窓会で再会した憧れの“R”の話「haRmony」、過去の犯罪が幸せ絶頂の彼を侵す「種−シード−」、先生と出張美容師の静かな生活「DRY ICE」、飛び降りようとする少年と彼を見つけた少女の話「誰もいない野原で」、明るくどこか微妙なラインの三角関係を描いた「プライベート・ウィルス」、水族館で出会った言葉を話せない少女と青年の物語「栗林かなえの犯罪」どれも秀逸。

特にお気に入りは「DRY ICE」。こういう静かな恋愛には非常に憧れます。そしてGirl's sideとBoy's sideの二部構成「栗林かなえの犯罪」もオチを含めて全て好き。駄目な少年がちょっと生き方が変わるかもしれない出会いと経験をした物語。彼の未来にまで思いをはせたくなるようなちょっとだけいい話でした。

この短編集はもう漫画という媒体を超越しています。活字でこの物語をあらわすのは難しいだろうし、映像化でも表現できないだろう空気こそ吉野朔実の作品ならでは。解説が島本理生さんで絶賛されています。すべて賛同。解説で書かれていた「台詞がかっこいい」、言われてみればかっこいい。今回印象的だったのは「haRmony」にあったセリフ「結婚して7年もたつのに1ミリも変わらずあなたを愛してる自分がくやしい!!」こんなセリフ言える様なまっすぐな主人公がうらやましい。

今回の短編集だけではなく吉野朔実の作品は、少女漫画にありがちな“切なさ”や“あこがれの対象”ではなく、現実の厳しさや冷たさ、リアリティが必ず根底にあり、そこからそれぞれの愛情が淡々と描かれている。あくまでも全て描ききらず読み手に想像させるようなタッチもいい。短編といえば最近読んだジェフリー・ディーバーの「クリスマス・プレゼント」が印象的だったが、それを遥かに凌ぐ作品群でした。
2007.02.15 Thursday 00:01 | posted by ソラチ
・ 吉野朔実 | permalink | comments(0) | trackbacks(0)
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