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評価:
坂木 司
東京創元社
¥ 780
(2006-02-23)
すごく感動しました
この手のジャンルは好きなのだけど・・
いろんなことを、気づかせてくれる
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↑amazonレビューの「あまりにも・・・」の意味がよくわかんないんですが。
ひそかにお邪魔している他所様のblogで、まるでblogパーツかと見紛うくらいになじんで紹介されている表紙が印象的でつい書店で手に取ってしまいました。とにかく面白かった!! 創元推理文庫らしい作品でした。クオリティが高い。そして隅々まで素敵だ。
酷く辛い少年時代を送り自閉的になってしまった友人は名探偵だった。主人公の坂木だけが彼と彼以外の世界を繋ぐパイプラインのようなもの。坂木によってもたらされるささやかな日常の謎を描く柔らかく温かなミステリ。短編が5作収録されています。
全体の印象としてとても優しい。読書中本当に様々な事を考えて想って感じて読める素敵な一冊。あまりにもいろんなことを想って読んだので、うまく文章にできない。。主人公の坂木は、こんな善人絶対に存在しない!!というくらい絵に描いたようないい人で、ちょっとした事でも感動して涙する。そしてひきこもりの名探偵は他人と係わり合いになる事に全力で嫌うにも関わらず坂木にだけは全幅の信頼を寄せている。坂木が涙を流すとパニックになり一緒に涙を流す。他人には辛らつで厳しい言葉を浴びせるのにどこか優しい。そんな名探偵のお話です。
私は普段あまり心を揺さぶられるような感動を味わえないタイプなので、こんな事で?と思うようなシーンで涙を流す坂木に共感はできないのだけれど、羨ましくなるようなまっすぐなホームズとワトソンです。ただ、名探偵の抱える苦しみと、ひきこもりの友人に対して自分だけ信じて欲しいという気持ちと、なんとか外に目を向けて欲しいと言う気持ちを抱える主人公・坂木くんの内面が語られているところが印象的でした。二律背反。人間って複雑で素敵です。
この作品では様々な事情だったり思いを抱える人々が名探偵によって秘密を暴露され、結果良い方に転がるのだけれども、それぞれの人間の内面がこれほど面白く描かれている作品は久々かもしれない。北村薫の柔らかさと伊坂幸太郎のイマドキ具合を足して二で割ったような印象。特に、歌舞伎役者の元にファンから届く奇妙なプレゼントの謎を描く「冬の贈り物」と、街で拾った不思議な子供の謎「春の子供」は読後感も作品の面白さも抜群。どう素敵だったのか事細かく書きたいけれど勿体無いような。結果、わけわからん書評に。書評ですらないや。変わった探偵を見てみたい、素敵なミステリを読みたいという方にはオススメしたい。ああ、素敵なお話でした。
巻末に既刊の広告があり、続編が出ているのは書店で見かけたので知っていましたが、3作目の紹介文に「感動のシリーズ完結編」と書かれていてショックでした。終わるんですか、このシリーズ。ハマった瞬間に終わりがある事がわかってしまうとは。なんて無粋なことを。。名探偵の坂木君への依存度が非常に高い分、この先に待つ完結編が怖くてしょうがない。変化してゆく、成長してゆく過程には必ずストレス、摩擦が発生するもの。変わってゆく彼らを見たいけれど見るのが恐ろしい。でもすぐに読みますよ、続編。怖いけれども楽しみです!!