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評価:
岡嶋 二人
講談社
¥ 600
(1996-07)
ストーリー展開の魔術師!
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貫井徳郎“症候群シリーズ”の元ネタでもある本作。あまりにも共通点多すぎてびっくりでした。激似です。別に嫌な感じじゃなくて、おお!!ここもか、みたいな発見が各所に。たとえば、警察関係者の所にチームのボスが接触すると、何も知らない奥さんが嫌がるとか。いいですね。
さて、夜道を歩いていると、若い兄ちゃんだったり酔っ払いにからまれて、振り払ったはずみで相手が死んでしまった。都会にありそうな“はずみ殺人”が続く中、その事件になんとなく共通項を見出した警察の偉い人が、通称「捜査0課」に事件の調査を依頼する。チームの構成は、美術商のボスに美人と軽い系の男。3人で罠を張り、少なく細い糸を辿り真相へ行き着く必殺系エンタです。
“症候群”シリーズに比べ、非常に軽く読みやすい。しかもこのチームの3人はめっちゃ明るいんですが。井上夢人色は薄く、貫井徳郎のような重さもなし。社会派テーマにもかかわらず軽く読めます。ただ、それって実現可能?とか、今まで捕まった人本当に大丈夫?とかその後か気になる箇所もあり、1冊にしっかり纏まりきらなかった面もあるのかな。他の岡嶋作品には劣るかもしれません。しかし、使用したテーマ、事件は非常に面白く、殺人を犯した人たちのその後のリアクションも様々でリアル。犯人も周到でなかなか辿り着けない仕組みだし。こんなこと実際にあったら恐ろしいですね。
“症候群”シリーズを読んでいた時にはまったく考えなかったけれど、今作を読んで、決して人様の前で堂々と職業を言えない陰のチームの話として伊坂幸太郎の陽気なギャング〜を連想してしまいました。チームのメンバーが明るかったからかな。作品が書かれた時代のせいもあるのでしょうか。ジョークや言葉遣い等にちょっとだけ古さを感じ、陽気な〜の方が面白かったかも。今回は事件や設定、犯人にしかける罠は秀逸なんですけど、ジョークを言うような明るいキャラクターって賞味期限があるのですねえ。そこだけがもったいない。もっと早くに読んでいたらもっと楽しめたような。