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評価:
山口 雅也
東京創元社
¥ 1,260
(1996-02)
迷作ではない、名作!
臭いがしそう…
ミステリ史に残る異色の傑作
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読了までほぼ10日もかかってしまいました。
設定も内容も非常に面白いけれど、なんだかうまく乗れず、時間ばかりかかってしまったような。。
まず、人の名前が覚えられません。
ジョン、ウィリアム、ジェイムズ、ジェイソン、ジェシカ、フレデリック、フランク、イザベラ、モニカ、ヘレン・・・・・どうやって覚えろと?
スマイリーとグリンはさすがに覚えたけれど、ようやく誰が誰だかわかってきたのが終盤のジェイソンとジェイムズの過去がわかったくらいからです。遅っ。なのでもう一度読み返さなければ100%は楽しめない・・。
ある日突然、死んだはずの死者が甦る。ある者は葬式の最中に、ある者は埋葬する最中に。そんな不吉な死者の影はニューイングランドのある葬儀屋一家にも及ぶ。今まさに家長たるスマイリー・バーリイコーンの命が尽きようとしている時、思わぬ殺人、甦りが一家を襲う。そんな感じのストーリーです。死者が甦ったら殺人は無意味なわけで、警察の混乱具合もなかなか際立って書かれているような。小野不由美『屍鬼』とは違い、今回は甦っても体は死んでいて、何もしなければ朽ちてゆく、そんな設定です。死者にとっても悩みが深い。よく出来たパラレルワールドっぷりだと思いました。
主人公のパンク青年グリンは、家長スマイリーの何度目かの遺言宣言で家中が遺産問題に揺れている中、いきなり毒死します。しかし、甦った彼はまさに生ける屍となり、自分が死んだ謎を追い始めます。生き死にに関する哲学的記述が非常に多くて、ゆっくり読めばかなり楽しいと思うのですが、地下鉄やお昼等に数ページずつ読み進めていたので、どうも反芻したり味わう暇がなくいまいち楽しめなかった。しかし、パンクカップルのグリンとチェシャはすごくいい。タランティーノ脚本の大好きな映画「トゥルーロマンス」を彷彿させるようなポップさ。これはホラー色一切ナシで映像化してほしい気もします。できないでしょうけど。
あとがきで法月綸太郎が「新しいトリックは出尽くした、本格派過去の遺物だ、という断言がはびこって久しいこの時代に、アヴァン・ポップな実験的諧謔精神に基づいて、偉大な先人たちですらなしえなかった超ウルトラCの妙技を披露してくれた」と書かれていましたが、本当にその通り。この作品を絶賛する人は多数いますが、どの本格小説とも似ていない山口雅也のオリジナル本格作品でした。キャラクターが覚えられずいまいち掴めずに楽しめなかった分、絶賛するにはもう一度最初から読み返す必要がありますが、パンクカップルに感動してしまった、それだけでミステリというジャンルを除けても面白かった。まじで感動しました。いい!!