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評価:
宮部 みゆき
新潮社
¥ 540
(1996-09)
読み甲斐のある短編ぞろい
お勧めです!
不思議な後味。
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最近読んだ本はどれもアタリな気がします。★4つ以上が多いし。amazonレビューの「不思議な後味」というのはちょっと意味がわからないけど、ハズレがない宮部時代もの。期待通りのクオリティでした。表題作の「かまいたち」をはじめ、「師走の客」「迷い鳩」「騒ぐ刀」の4作からなる短編集です。
まずは一話目。“かまいたち”と呼ばれる辻斬りが横行する中、戻らない父を迎えに行ったおようは辻斬りを目撃する。急いで番屋に駆け込み、同心を連れて現場に戻るとあったはずの遺体が消えていた。死体消失の謎、かまいたちの正体、目撃者・おようの身に迫る危機などサスペンス色たっぷりのミステリです。かまいたちの正体については、そういえば似たような話が京極夏彦「巷説百物語」の中にあったなあと思いながら読みました。死体消失のような設定は大きく違いますけど。この作品は短編じゃなくても良かったかも。長編として書かれても遜色ないくらいにキャラクターが良かった。シリーズで読みたい。次回は大岡様付きで。
二話目「師走の客」は本当にお見事な短編。年に一度、逗留する商人。彼は宿賃の代わりに高価な干支の細工ものを置いてゆく。話の短さも内容も丁度良く短編としては非常に面白い。ただトリックがちょっと微妙かもと思ってしまいました。私は宮部時代ものにはミステリ度よりサスペンス性を求めているらしい。
三話目「迷い鳩」、四話目「騒ぐ刀」は、不思議な力がある事がわかったお初の捕物帖。これっておそらく講談社の“霊験お初”のシリーズでは??作者によると初期に書かれた作品らしいんですが、それでもこれあのシリーズでしょう。講談社版ではお初以外の名前がうろ覚えなんですが、お初が不思議な力に目覚める様子が書かれていてファンにはたまりません。思いもしなかったところで大好きなシリーズのキャラクターに会えるなんて。それだけでも読んだ価値がありますね。
「迷い鳩」は、ある商家の女性の裾にべっとりついている血がお初にだけは見えた、そんな不思議から始まるミステリです。十分な面白さですが、ある刀鍛冶の弟子2人が作った刀を巡る「騒ぐ刀」の方が好みです。スリルがあって、大立ち回りもあってしかし温かさやドラマもあってドキドキしながら読める。宮部時代物の真骨頂ですね。またお初に会いたくなり、霊験お初のシリーズを再読したくなりました。