ながし読み日誌

文庫で読書。最近はハードボイルドに傾倒気味です。。
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2010.04.07 Wednesday | posted by スポンサードリンク
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乱鴉の島/有栖川有栖

評価:
有栖川 有栖
新潮社
(2006-06-21)
もうすぐノベルズ版が出ます
期待していたんですが…
詰め込みすぎた
さてさて、周囲では評判の高い「乱鴉の島」ですが、これも運良く人から借りられました。ラッキー☆ 焦ってノベルスで買ってしまわないで良かった〜。まあ、文庫化されたら購入するんですが、まさかこんなに早く読めるとは思わなかった。火村シリーズの孤島モノです。

忙殺され、下宿のおばちゃんに半ば強制的に休養のための旅行を勧められた火村は、作家アリスを伴い、小さな島の民宿を目指す。しかし、手違いで別の島へ着いてしまった二人の前には、例のごとく殺人事件が待っていた。
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2008.12.31 Wednesday 02:11 | posted by ソラチ
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妃は船を沈める/有栖川有栖

評価:
有栖川有栖
光文社
(2008-07-18)
「運命の女」と「猿の手」
有栖川ファンであれば買うでしょう
斜に構えず、が肝心
↑「有栖川ファンであれば買うでしょう」とな。私はファンですが文庫化まで待ちますよ。運良く同僚に単行本を借りられたので何年後かの文庫化の前に読めました。ラッキーです。

長編ではあるものの第一部「猿の左手」、幕間、第二部「残酷な揺り籠」の三部構成。意外な感じの構成の謎は「はしがき」として冒頭で説明されていました。あとがき読まない派ではありますが、はしがきならば読まずにいられないし、ちょっとむっとはしましたが、この作品にあとがきはいらない。それくらい読後感が哀しくて良かった。読後感に浸るにはやっぱりあとがきや解説はいらないわ、と再認識。文庫になったら「文庫版あとがき」が付きそうですけど。

さて、「猿の左手」は、殺人と思われる事件の線上に浮かんできた女王のような女性の存在。関係者ではあるものの容疑者にはなり得ないその女性は、ふらふらしている若い男性を拾ってきては面倒を見ている裕福な女性で、物語の中での存在感が絶大。彼女は、第二部「残酷な揺り籠」でも登場する。この作品は、女傑VS准教授というスタイルで、全編に漂う緊迫感がかなり好みです。「残酷な揺り籠」の終盤、意図的に幾つかの演出がされていて、それがまたエンディングの空気を独特なものにしている。こういう空気をどこかで読んだことがあるんだけどどうしても思い出せない。「幻想運河」がこんな感じだったか。

実際のところ火村の追及は完璧なものとは思えないんですが、物的証拠が揃っていなくても火村先生にかかると落ちる、という話や、「砂上の楼閣なのにちゃんと建っているように見える」という風に書かれている箇所があり、完璧に追い詰める、ぐうの音も出ないくらいに完膚なきまでに叩きのめすような類のオチではありませんでした。意図したものなのか結果そうなったのかわからないですが、後半の演出はかなり好きなので、最近読んだ有栖川作品の中では一番好みかもしれません。やっぱり火村シリーズ好きだわ。評判の良い『乱鴉の島』ますます読みたくなってきた!新書に手を出す前に文庫化してほしいよう。

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2008.12.27 Saturday 01:03 | posted by ソラチ
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火村英生に捧げる犯罪/有栖川有栖

評価:
有栖川 有栖
文藝春秋
(2008-09-25)
准教授
短編集の醍醐味
楽しめる構成
おそらく女王国以来の有栖川作品かな。借り物ですが豪華にハードカバーで読書。文庫版出たら文庫で買いますけど。様々な趣向を凝らした短編実に8作品も収録した一冊で、ボリューム満点。有栖川有栖で読むのに1日以上かかったのはおそらく初めてだ!文庫化されたら幾つか削られるのでしょう。前科ありますし。

閉鎖された工場から逃げる犯人を目撃する「長い影」、退屈しのぎに火村先生がアリスに昔の事件の話をする「鸚鵡返し」、ミステリ界の大御所が遺したミステリを解く「あるいは四風荘殺人事件」、ミステリのラストシーンのみを抜粋したような「殺意と善意の顛末」、下宿にて酒のつまみに過去の事件を語る「偽りのペア」、大阪府警へ挑戦状が届く「火村英生に捧げる犯罪」、ダイイングメッセージに挑むパズルミステリ「殺風景な部屋」、雨の日に庭で雨合羽を着た男性が不審死を遂げる謎「雷雨の庭で」全8話、実に多彩です。

一日に1話、2話くらいずつ読み進めていたため、一冊読み終える頃には最初の方の作品は既に忘れかけていました。なんという忘却能力だ。。。作品集としては色々なパターンの作品があり嬉しい限り。特に始終火村の語りで進められる「鸚鵡返し」はファンには垂涎モノですし、同じく「偽りのペア」はお馴染みの下宿での話なので、『ペルシャ猫の謎』で文庫化の際に割愛され「猫と雨と助教授と」を読みそびれた身としては、文庫化の後に割愛されるかもしれない候補2作を事前に読めた事は収穫でした。まあ、ファンのためのショート・ショートという印象ですけど。

印象に残った作品としては、「長い影」と「雷雨の庭で」でしょうか。特に「雷雨の庭で」は、事件の顛末、犯人、オチまで好みのタイプのミステリでした。反対に、「殺風景な部屋」は、ダイイングメッセージの存在意義を私は信じていないので、パズルミステリとしては面白くてもどこか残念な感じが付きまとう。死の間際、犯人の名前を残そうとするのではなく、助かろう、生きようとするのが心情では・・とどうしても思ってしまうのですね。表題作「火村英生に捧げる犯罪」は、タイトルも面白いですし、犯人の目的も事情も面白い。空回りみたいなものって世の中に多くあるので、ご都合主義な小説の世界でそんな空回りみたいな事情を書かれるのを見るとリアルで面白い。これまでにないくらい楽しんで読めた短編集でした。

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2008.12.20 Saturday 18:18 | posted by ソラチ
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マジックミラー 新装版/有栖川有栖

評価:
有栖川 有栖
講談社
¥ 730
(2008-04-15)
Amazonおすすめ度:
鉄道ミステリへのオマージュとその乗り越え
文庫化された有栖川有栖の作品で、実は未読だったのが今作「マジックミラー」と「幽霊刑事」「山伏地蔵坊の放浪」の3作。どれも今更感があって手が出せない状態でしたが、新装版を古本屋で見つけて迷わずゲット。新装版って今更なかなか手を出しにくい名作を手に取らせる効果もあるのだな。

表紙を捲って驚いたのが、講談社文庫のあのショッキングピンクの表紙も中にしっかりあるじゃないですか。これはさりげない優しさで嬉しいですね。ちょっと得した気分です。

余呉湖畔にある別荘で女性が殺害される。周囲には人気がなく、夫は福岡、双子の弟は新潟に居てアリバイは完璧。しかし、亡くなった女性をずっと想っていた作家・空知と被害者の妹は、諦め切れずに独自に調査をはじめる。

いわゆる時刻表トリックであることは、各所で掲載される時刻表の図からもわかります。まあ、こういうものは自分でも時間を追って確かめるのがきっと楽しいんでしょうが、時刻表トリックは苦手ですので、そういう楽しみ方はできません。ただ、時刻表トリックが使われる場合、大抵、犯人の目星がついてしまっているので、犯人探しという点での楽しみ方もできない。むむむと思ったところに新しい展開があり、鉄道ミステリだけではない、しかもトリックやミステリ部分以外に、これからどうなってゆくのか、みたいな物語の展開を楽しめる作りになっていました。ありがたい。

読後の印象は、「幻想運河」に近い感じ。トリックも勿論だが、物語性をしっかり書かれていて満足です。「幻想運河」を初めて読んだ時には、有栖川有栖の新しい一面を見た感じだったのですが、こんな昔からそのルーツがあったのですね。もちろん、作家アリスシリーズも学生アリスシリーズも大好きですけれど、思い入れ補正等を除いて見ると、「幻想運河」や今回の「マジックミラー」の方が物語としては好みです。まあ、シリーズものに対する思い入れ補正はそれ以上に大きいんですけど。

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2008.09.04 Thursday 00:11 | posted by ソラチ
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モロッコ水晶の謎/有栖川有栖

国名シリーズ第8弾。ようやく文庫落ちしました。国名シリーズは、買うときいつも、既に持っているような気がして迷います。1冊くらい買いそびれていそうな気もするけれど、今作は正真正銘文庫化初のはずなので、、、また同じの買っちゃったという失敗はないはず。。。

さて、収録されている作品は「助教授の身代金」「ABCキラー」「推理合戦」「モロッコ水晶の謎」の4作。そのうち「推理合戦」は超短編なので、ほか3作が意外とボリュームあります。というよりも「モロッコ水晶の謎」がボリュームありました。

第一話「助教授の身代金」はまあ、誘拐モノと言えなくもないですが、そこがメインではなく身代金がどうという話ではないので、タイトルとはちょっと違った感じの作品です。事件自体はベタかもしれないけれど、誘拐事件に対する一般的な見解だったり火村とアリスの事件に対する討論が面白い。

一方、「ABCキラー」はクリスティの「ABC殺人事件」をモチーフにした作品で、スピード感もエンタメ度も高くわりと楽しめます。アリスと火村先生に近づく新聞記者が非常に嫌なカンジで登場。再登場願いたくないキャラクターでした。彼の嫌さと事件の派手さが印象的で、犯人像が見えにくいシリアルキラーを追う過程が面白いのですが、迎える結末は、ちょっと盛り上がりに欠けるような、気が抜けるような感じでした。まあでもそれまで十分楽しんだのだから文句はない。

第三話「推理合戦」は携帯サイト「綾辻行人×有栖川有栖 J-ミステリ倶楽部」のために書かれた作品のようです。携帯サイトずっと見てたはずなのにこの作品に覚えがない・・。まあ、シリーズファンへのおまけ的な作品ですが、殺人事件のような犯罪が絡まない日常の推理合戦は見ていて楽しい。この作家だからこそ、日常ミステリが珍しく楽しいのか。むむむ。

最後は表題作の「モロッコ水晶の謎」、毒殺事件の現場に居合わせてしまった間の悪いアリスと、セレブな関係者たち。誰にも毒を入れる暇はなかったはず。犯人はダレ?という心躍る設定のミステリですよ!! 犯人や動機はまあ、特別驚きなものではないけれど、どうやって毒を飲ませたか、が面白い。これは無理あるだろうと思っても、こういうこともあるのかなと思わなくもなし。結構考えながら読める余裕もあり、久々に推理小説を楽しめました。さて、本当にそろそろ作家アリスシリーズの長編が読みたいぞ。

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2008.03.27 Thursday 18:15 | posted by ソラチ
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女王国の城/有栖川有栖

評価:
有栖川 有栖
東京創元社
¥ 2,310
(2007-09)
全部がパズルみたいでした
待った甲斐が…?
後半の加速度が良かった
さすがに文庫化までは待てないので、なんとか2007年度中に読了できました。待ちに待った江神シリーズ、少しも変わらない彼ら彼女らに出会えた事が何より嬉しい。

消息を絶った江神二郎の足取りを追って辿り着いた所は、新興宗教団体「人類協会」の郷だった。城に閉じ込められた推理小説研究会の面々の前で起きる連続殺人。誰が?何のために?例によって読者への挑戦ありの江神シリーズ第四弾。当然、本格ミステリです。

本の厚さに最初は少々怯みましたが、読み始めると実にすいすいと読みやすい。いつもの有栖川有栖です。マリアを追いかける前作に比べ、今回は江神さんを追うスタイル。そして閉じ込められる城ならぬ新興宗教の総本山は、人当たりこそ良いものの既に何か大きなトラブルを抱えて怪しさ満点。整いすぎた舞台に浮き足立つわけでもなくしっかり本格ミステリなところが素敵です。いや、一ヶ所サービスかとも感じられる場面はあったか。閉じ込められた環境から脱出するために取った強攻策が、この作家には実に珍しいアクションでした。意識したようにエンターテイメント色を出したのは、やっぱりファンサービスなのかなあ。

宗教団体を舞台にしたミステリは好きなんですが、「人類協会」が隠していた秘密は、そりゃわからないよ、というもの。わかった人いるのか。TV番組「安楽椅子探偵」の難易度を考えるときっとどこかにヒントが散りばめられていたのでしょうけど、もうすこし、その秘密をメインストーリーに絡めても良かったのに・・と思いました。所詮、わからなかった人間の遠吠えなのか。。ただ、新興宗教団体を全否定した内容でなかった事が、まあちょっと驚きました。実に綺麗に終わった。そして、マリアとアリスの恋みたいなものもそこはかとなく感じられるような。。。プラトニックですが。こういう青さが江神シリーズの良いところなのかしら。

ファンにあるまじきことですが、この江神シリーズはどうやら5作で終わる様子。短編も幾つかあるだろうから、あと数作しか楽しめないわけで。それが実に残念です。これまで今年こそ出るかと裏切られ続けてきたのだから、5作の縛りも裏切られたい。勿論、5作目が出た後で。

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2007.12.31 Monday 01:40 | posted by ソラチ
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白い兎が逃げる/有栖川有栖

評価:
有栖川 有栖
光文社
¥ 680
(2007-01-11)
中編のうまみ
すっかり忘れていました、有栖川有栖文庫の新作。といっても今年1月に発売なので半年近く忘れていたわけで、ようやく購入。火村シリーズの短編集です。

第一話・不在の証明 ◇ 殺害現場から出てきた所を目撃された男には確固としたアリバイがあった。見事なまでに本格、トリック、不在証明に真っ向から取り組まれた作品。長編で見られる遊び部分が削りに削られていたので、シリーズファンとしては物足りない感もするけれど、本格を楽しむという上ではいいのかも。途中、作家同士の嫌味な舌戦のうしろに作者の色々な思いが見えたような気がしました。そういうサービスはいらないや。

第二話・地下室の処刑 ◇ あるテロ組織内の処刑の場で思いがけない毒殺事件が発生する。誰が毒を盛ったのか。こちらは純粋な犯人あてミステリ。誰が、なぜ、どうやってというミステリはやはりミステリファンを魅了してやまない。ただ、これも無駄な部分が省かれていてすっきりしてる分、無駄な部分を期待して読んでいる私のような読者には物足りなさがどうしても。。。このテロ組織はそういえば「暗い宿」でもちらっと登場したような。共通の設定なのですね。

第三話・比類のない神々しいような瞬間 ◇ ダイイング・メッセージものですね。最近何かで、「ダイイング・メッセージというのは結局失敗しているから謎なんだ」みたいな事を書いている本を読んだ気がする。鯨統一郎だったかな。そんな話を思い出しながら読みました。作者はクイーンが好きなのだなということだけは伝わってきます。Xの悲劇、苦戦した覚えがあっても内容は覚えていないのでもう一度読みたくなりました。タイトルへの思い入れが私にはいまいち薄い分、無理にタイトルに拘っている気がしてちょっと違和感もあったりした。

第四話・白い兎が逃げる ◇ これはそういえばe-noelsで買ったはずなのにタイトルしか覚えていなかった!! 今回の短編集の中で一番の分量、一番の面白さでした。有栖川有栖では珍しい時刻表トリック(にカテゴリされるのかな?)。そういえば時刻表トリック、この作家であまり記憶にありません。犯人のアリバイ崩しが結構あっさりだったけれども、作品の分量、そして何よりラストシーンがすき。石持浅海の「そして扉は閉ざされた」のラストシーンに近い感じの臨場感。これから訪れる破綻の足音をすぐ側で感じながら終話です。さすがに歴の長い推理作家、小技大技満載です。e-novelsで初めて買って読んだ時にはこれほど印象的ではなかったような。当時と今では読んでいる作品が違うからかな。久々に有栖川有栖の作品を堪能しました。最後の作品だけでも十分楽しめた!!次は講談社の国名シリーズあたりが文庫になりそうな気がするので楽しみ。
2007.05.10 Thursday 16:10 | posted by ソラチ
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虹果て村の秘密/有栖川有栖

評価:
有栖川 有栖
講談社
¥ 2,100
(2003-10-26)
虹果て村の秘密って?
大切な夏休み
私の夢は、日本一の刑事になることです

久々のミステリーランドです。古本屋でゲット。今まで読んだミステリーランドの中ではかなり面白かったかな。大人向けか子供向けかは判断できないけれど、大人が読んでもミステリファンが読んでもしっかりミステリです。面白い。

親が推理作家で刑事に憧れる優希と、親が刑事で推理作家に憧れる秀介。12歳の二人が夏休みに向かった虹果て村には7つの伝説とドキドキのミステリが待っていた。みたいな感じ。7つの伝説はあまり関係ない感じだけれど、不思議がいっぱい詰まった一冊で子供の時に読んでもきっと楽しい。

村で起きる殺人事件は、ちょっと動機がお粗末だったけれど、子供二人が犯人を追っていく過程や、あからさまなミスリード、本格らしく堂々としたヒントの散りばめ方(堂々過ぎですけれど)、そして何より会話の面白さ、どれをとっても最高。特にお姉さんのキャラクターやセリフは素敵です。海外小説を読んだ直後だからかもしれないけれど、国産小説はセリフに遊びがあって得ですね。今まで読んだミステリーランドの中では一番好きかもしれません。有栖川有栖は大好きな作家なので、この作品を読んでいる最中ずっと火村シリーズが読みたくて仕方ありませんでした。火村の減らず口が読みたい。
2006.12.29 Friday 20:37 | posted by ソラチ
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幻想運河/有栖川有栖

評価:
有栖川 有栖
講談社
¥ 620
(2001-01)
どっちやねん
アムステルダムと大阪
異色作

作家アリスシリーズの新作が非常に出来が良いようで、文庫待ちの身分としては狂おしいほど読みたい。どちらかといえばヒムラーなので本当に読みたい。かつてこれほどまで有栖川有栖の作品を求めたことがあるのかというくらい読みたいので、その欲求を誤魔化すために積読本にあった「幻想運河」です。

大阪のあちこちの川で発見されるバラバラ遺体。犯人が車から降りて遺体の一部を橋から投げ捨てる場面も目撃され、仕舞にはその現場を警察にも押さえられる。そんな杜撰な犯行シーンから始まる本書。舞台の大部分はアムステルダムで出会った日本人たち。そこで発生した日本人男性のバラバラ遺体も同じようにアムステルダムを縦横に走る川で発見された。

正直、これほどまで有栖川作品に感動したのは初めてです。作中作も、大阪とアムステルダムを舞台にした2つの似たような事件も、関係者たちのキャラクターも本当にいいや。文庫の紹介文で有栖川裏ベストって書かれていたけれどこれは文句なしにベストだよ。これまで作者がパズラーと言うこともあって、失礼ながらなかなか彼の作品に対して高評価ではなかったのですが(シリーズ好きですけれど)、この作品は私にとってハンパじゃない衝撃です。諸手をあげて絶賛したい。

特にアムステルダムで知り合った関係者たちの微妙な関係、バックパッカーのように放浪する主人公が感じた異邦の街、人、ドラッグが見せる幻想の書かれ方が本当に魅力的で、幻想運河というタイトルがしっくり来る。作中作も読者をミスリードするだけでなく、犯人や動機など真相にも繋がっている。“事件の真相が明かされない”スタイルの小説というのは気持ち悪いし納得ができないものも多いけれど、これは読者に想像させるアイテムが綺麗に配置されていて読者に優しいミステリでした。いや、本当にラストシーンまでいいな。

直前に読んでいた「虚無への供物」で世紀の大作に挑んで敗北したような気分だったので、軽い系のミステリをと思って軽い気持ちで手に取ったのだけれど、軽いどころかカウンター食らって興奮状態です。シリーズ外だからというだけで何となく今まで手に取らずに積読本にしていたことが悔やまれる。シリーズという縛りがなかった分、自由に書かれたのかな。本当にいい作品でした。
2006.09.20 Wednesday 22:17 | posted by ソラチ
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スイス時計の謎/有栖川有栖

評価:
有栖川 有栖
講談社
¥ 600
(2006-05-16)
「スイス時計の謎」――クイーン《国名》シリーズへの挑戦
読みやすい短編集
うーん

一度買った本をもう一冊誤って買ってしまう、そんな経験ありませんか?

本好き100質でそんな質問がありましたが、わたしはあります。一度だけ。忘れもしない有栖川有栖『46番目の密室』。本格ミステリ好き、パズラー好き、本好きだったらアリエナイだろうな。まあそんな事二度とないだろうと思ってきましたが。

今回の『スイス時計の謎』。文庫化した時期に丁度他作家の本を読み漁っていたため購入が遅れたのですが。。。なぜ知っているっぽい話があるのだ?1話目の「あるYの悲劇」は『「Y」の悲劇』で既読だった。しかし、それ以降の話になんとなく覚えがあるのはナゼだ?しかも短編4編全てだ。それぞれの短編は小説NONやメフィストで発表されている作品。しかし最近メフィスト買ってないし、そもそも小説NONなんて手に取った事すらないし。過去に購入した覚えマジないんですけど。とりあえず自分の書棚をチェックはしたくない。

読んでいる間中、既読っぽいという疑念に囚われ、心穏やかではありませんでした。1話目「あるYの悲劇」は、ダイイングメッセージ一本の直球勝負。オチはむむむというカンジ。2話目「女彫刻家の首」はわりと面白い設定でした。頭部を切断された遺体が発見され、頭部は彫像の頭とすげ替えられていたというもの。話もトリックも面白かったが、ラストの裁き云々のセリフがいらないと思いました。火村英生の内なる炎は他に見えなくていい。見えにくいからこそいいのになあ。

3話目「シャイロックの密室」。犯人目線のコロンボスタイル。倒叙モノというらしい。有栖川有栖ではすごく珍しい気がする。『ペルシャ猫の謎』の「わらう月」以来かな。犯人の、絶対にわからないはずだ、わかるはずがないみたいな感情がものすごくストレートに伝わってきて私にしては珍しく感情移入して読みました。私が犯人だったら即バレだなあと。こういう気持ちが追い詰められてゆくような話は好き。

そして表題作の「スイス時計の謎」。中編です。コンサルタント会社の経営者が殺害される。彼は年に1度開かれていたある“同窓会”のメンバー。それぞれのメンバーを追ってゆき一同集まった中で「あなたが犯人です」というパターンです。王道です。これはいい。スイス時計という小道具もいい。本編、ミステリとはあまり関係ないが、美少女ネタが火村英生に揶揄されるのかと思いきやあまり使われないで終わってしまってそれだけが少しがっかり。繰り返しの笑いだったらあともう一回ぐらいどこかで使って欲しかった。麻耶雄嵩『翼ある闇』の“ヘイスティングス”ネタくらいには。
2006.07.05 Wednesday 21:01 | posted by ソラチ
・ 有栖川有栖 | permalink | comments(5) | trackbacks(1)
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