ながし読み日誌

文庫で読書。最近はハードボイルドに傾倒気味です。。
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2010.04.07 Wednesday | posted by スポンサードリンク
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ネクロポリス/恩田陸

評価:
恩田 陸
朝日新聞出版
¥ 756
(2009-01-09)
あとから"くる"作品
すごく面白い!・・・あれ?
本を読む醍醐味を。

評価:
恩田 陸
朝日新聞出版
¥ 756
(2009-01-09)
知りたかった情報
独自の世界
何とも言えない…

抜群の安定感を見せる恩田陸のファンタジー。ミステリでもあるかな。

死者に再び会う事ができるアナザー・ヒル。ヒガンと呼ばれる期間だけ地域の人々は島へ滞在し、死者と再会を果たす。今年の目玉は“血塗れジャック”による連続殺人事件の被害者たちから犯人の情報を得ることだ。文化人類学を学ぶジュンは、初めてのヒガンを過ごすため、アナザー・ヒルへと渡る。
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2009.06.23 Tuesday 23:56 | posted by ソラチ
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ねじの回転―February moment/恩田陸

評価:
恩田 陸
集英社
¥ 500
(2005-12)
二・二・六事件へのオマージュ
ページを繰る手が止まりません
見事な前ふり

評価:
恩田 陸
集英社
¥ 480
(2005-12)
二・二・六事件へのオマージュ
ぜひ映像化を…!
これは傑作だと思います

これは面白い。古本屋で購入してから何となく積読と化していた期間が今では信じられない。想像以上に良かったです。

二・二六事件でクーデターを起こした軍人、安藤大尉と栗原中尉。二人は、歴史を正しく辿るためのプロジェクトとして未来からやってきた者たちに指示され、事件の朝を繰り返す。しかし、歴史とは違った事実が目の前に展開されてもなぜか不一致にならない。そこにはプロジェクトチームともその時代を生きた人々とも違った第三者の介入があった。
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2009.05.30 Saturday 16:18 | posted by ソラチ
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象と耳鳴り/恩田陸

評価:
恩田 陸
祥伝社
(1999-10)
ノスタルジック
シャーロックホームズみたい
世紀末の情景を点描する、短篇ミステリ集

ここ数年、1月には記憶に残る傑作に出会えてきましたが、今年はコレだ!!評価も★5つと迷いましたが、この作品の性質上、ドカンとインパクト抜群というタイプではなくて、じわじわと後味が素敵な作品だったので、読了直後の感覚を信じて★4つ。

直前に読んだ大倉崇裕さんの「三人目の幽霊」も良い作品だったのですが、大きく分類すると同じ日常ミステリと思われる恩田陸「象と耳鳴り」は別格でした。その差は、もしかしたらただの好みなのかもしれないですが。

退職した判事・関根多佳雄が出会う不思議なミステリの数、実に12篇。散りばめられたわずかな情報から推理する面白さ。パズルミステリはわりと苦手ですが、今作のような、論理的に推理する面白さ、上品で上質なミステリを味わえる喜びみたいなものがあります。きっと主人公とその時々違う推理のパートナーとが醸し出す、落ち着いた空気の中での推理合戦が素敵なのだ。

印象に残った作品としては、幾つかの事件や噂からひとつの推論を導き出す「給水塔」、検事と弁護士がバーで一枚の屋内の写真から住人を推理する「机上の論理」、都市伝説の謎に迫る「魔術師」の3作品。特に「給水塔」は、推して知るべし、と言わんばかりのオチの着け方(人によっては不親切さ?)、散歩途中の雑談という舞台設定がすごく好きです。また、「机上の論理」も想像できそうなオチなのに、そのとおりだった事が嬉しくて楽しい。主人公が、人によってはおじいちゃんと呼ばれるくらいの年齢でも、こんなにも魅力的でおしゃれで素敵なのだ。もっと彼の出会う日常を見たい、続編を願いたくなるような作品集でした。満足です。

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2009.01.30 Friday 00:22 | posted by ソラチ
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ユージニア/恩田陸

評価:
恩田 陸
角川グループパブリッシング
¥ 660
(2008-08-25)
面白いが・・
気分が重くなる・・・。
余韻
「ねえ、あなたも最初に会った時に、犯人って分かるの?」そんな紹介文があったら読むしかないでしょう。名家で起きた大量毒殺事件が数十年経ってようやく解き明かされてゆく物語ですが、劇的でアクティブなミステリではないのにまず驚きました。若い探偵が過去の大事件に挑むようなよくあるスタイルだと思っていたのに、全くちがったよ。

事件発生後、何年も経ってからその事件に関する本が出版される。それを受けてインタビュアーが関係者の話を聞いてゆくスタイルで物語は進みます。ちなみにインタビュアーが誰なのかはわからないまま物語は進みます。

事件がインタビュアーによって少しずつ少しずつ読者にも明かされてゆく様子は、最近読んだ「吉原手引草」に近い感じでしょうか。旧家で起きた大事件、それに関わった人たち、どれも恩田作品でよく登場するような感じのキャラクターたちでした。幻想的でどこか古い洋館のようなイメージ。独特だけれど恩田陸っぽい舞台設定です。

ところで、私は本を読むのが比較的速いんですが、この作品は読了までにひどく時間がかかってしまいまして、カバン本なので1日2日くらいで読み終えると思っていたのになぜだろうとずっと思っていました。決して冗長ではないし、読みにくいわけでもない。「三月は深き紅の淵を」は読みにくかったけれど。読了して初めて気がついたのは、きっと恩田陸は人を深く書くんだろうなあということ。

以前、京極夏彦が何かのインタビューで、例えば木場修太郎の家族について聞かれるけれど、設定や背景は決めているけれど書く気はない、必要がなければ書かない、みたいなことを仰っていました。作家によっては背景や設定、キャラクターの奥深くまで文章にする人もいればほとんど書かない人もいる。この作品は、登場人物のどうでもいいような細かな心の動きやバックグラウンドまで緻密に描かれています。インタビューには割愛すべき部分と本当に聞きたい部分がありますが、それを全て記載することで、読者自身が取材したような感覚になりますし、リアリティもある。そういう効果もあってこれほど細かく書かれているんだろうと感じました。作者にとって書きたいのは人であって、事件は人を書くためのスパイスでしかないような印象。だから謎は謎のままに・・なんでしょう。

物語を彩る要素のひとつに特徴的な色が幾つか登場します。例えば青い部屋、白い花、黄色い合羽、ただ、一貫した色彩は、巻末のユージニアノートにあった「ツインピークス」の色合いでした。作品自体がツインピークスみたいだとは思いませんが、全体が白と青で撮っているようなイメージ。

ひとつだけ印象に残った文章があって、「見える人間」と「見えない人間」について。見える人間、見られる人間のリスクと見えない人間のメリット・デメリットについてのくだりが、とても納得して読みました。その部分も含めて、色々な人の感情が細かく書かれていて、“人”を読める不思議な読後感でした。

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2008.09.19 Friday 22:39 | posted by ソラチ
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上と外/恩田陸

評価:
恩田 陸
幻冬舎
¥ 680
(2007-10)
リサーチ不足
がんばれ! 練君
上下巻

評価:
恩田 陸
幻冬舎
¥ 720
(2007-10)
面白かった!そして題名の意味は

もともと6つに分冊されているようですが、横着して上下巻で買ってしまいました。上下まとめてレビューです。

離婚して離れ離れになった家族が一度だけ一緒に過ごす夏休み。父の仕事の関係で今回は中央アメリカでバカンスを過ごす一家だが、突如始まったクーデターが家族を離れ離れにする。

もしかしたら分冊版で読んだほうが良かったのかもしれない。上巻は家族が離れ離れになり、舞台が整ったところで終わるのですが、ひとりひとりの背景を紹介する回想が多かったり、時間軸がわかりにくいようなブツ切りな印象が序盤あって、実は少し読みにくかった。もともと分冊または連載用として書かれていたものだからなのかもしれません。勿論、離れ離れになるまでの事ですし、回想シーンの中でもおじいちゃんの話はすごく良かった。「人生は何もしないでいるには長いが、何かをやり遂げるには短い」有名な格言らしいのですが、わたしは初めて知り、ちょっと感動しました。本当にそのとおりです。

兄と妹、子供ふたりでジャングルに放り出されてからはサバイバルと冒険の一途。絶望と何度も戦いながら生きようとする姿は面白い。特に主人公の少年がニコと出会い“オウ”と戦うシーンなどページを捲る手が止まりません。父と母サイドの頑張りが、子供たちの壮絶さに比べて少し見劣りしてしまった残念感も少しあり。子供が主人公なので当然ですが。パパにももう少し見せ場が欲しかったなあ。結局のところ、家族の関係がこれからどうなるかはともかく、それぞれ物凄い体験をするわけで、大人になったり、愚かな自分に気がついたり、人間としてそれぞれが成長してゆく物語なのでしょうが、古代の遺跡を舞台にしたエンタメ要素も高いので、誰でも楽しく読めそうです。

実は、読んでいるあいだずっと、高村薫「わが手に拳銃を」みたいだ、と感じていました。おじいちゃんの居る町工場やニコを李歐のイメージに勝手に重ねて見ていたからかもしれない。冷静になると全然似てないんですが、なぜでしょう。ラストシーンを見たときに、これ李歐だろ、と確信してました(笑)。これを機に高村薫を読み返したくなってきました。今まではほぼ文庫で読んでいたものが多いので、今度はハードカバーで読み返すのもいい。

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2008.03.20 Thursday 22:05 | posted by ソラチ
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蛇行する川のほとり/恩田陸

評価:
恩田 陸
中央公論新社
¥ 620
(2007-06-25)
雰囲気は楽しめるけど
蛇行する物語
じわじわ
4人の少女と2人の少年。彼らは皆、過去の事件に関わっていたり秘密を持っていたり、真実を知る権利がある。ミステリの要素を取り入れながら「少女」とノスタルジーを描いた秀作。今更ながら恩田陸ブームのようです。

美術部の憧れの先輩二人と演劇祭の舞台背景を描くために合宿することになった毬子。期待に胸を躍らせて迎えた合宿で、遠い昔に封印されたはずの秘密が少しずつ明らかになる。

美しく憧れの先輩と一緒に絵の製作に取り組む、胸の弾むような合宿を前に、しらないw少年から合宿には行くなと警告を受ける。合宿で何が彼女を待ち構えているのか。第一部から終章まで、別の少女の目線で物語が進みます。作品で登場する少女はみな魅力的で、少女にはそぐわない秘密も抱えている。それが徐々に明らかになる加減も絶妙で、過去に起きた事件の真相に迫ってゆくと同時に彼ら彼女らの身に起きる事件も見逃しがたく、ミステリとして面白いと思うのですが、ただこの作品の一番の魅力は、「少女」たちなのだろう。作者もあとがきで書かれていたけれど、子供の頃に憧れた同性の先輩だったり、こうありたいと思う友人だったり、これほどまで女の子のノスタルジーを描いた作品も珍しく感じるのは普段、血みどろのミステリやおっさんが活躍するハードボイルド、時代小説を好んで手に取るわたしの読書傾向のせいかもしれません。新鮮な、ちょっと懐かしい思い出のような作品でした。純粋に楽しかったけれど、性別・年代によってはどういう作品に感じるのか、どこに良さを感じるのか異なるのかもしれません。それもそれで興味深い。

余談ですが、想像していたより面白かったのでその勢いで、弟に古本屋で4冊恩田陸を買ってきて貰いました。「図書室の海」「禁じられた楽園」「上と外(上)」「ロミオとロミオは永遠に(下)」。保存状態重視とはいえ一番読みたい「上と外」と「ロミオとロミオは永遠に」が片方ずつなんですが・・・・。何かのイヤガラセか。まあ、少しずつ読んでいきたいです。

JUGEMテーマ:読書
2008.03.11 Tuesday 19:35 | posted by ソラチ
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ドミノ/恩田陸

評価:
恩田 陸
角川書店
¥ 580
(2004-01)
東京駅が異様なのだ
おもしろいか?コレ
いい意味で「もうたくさん」
ずっと気になっていた一冊ですがようやく読了。特に読みにくいわけではなく、通勤本にしていました。大勢の人が行き交う瞬間運命のドミノが次々と倒れてゆく、文庫裏表紙の紹介通りのドタバタ劇でした。本当に大勢の人が登場しますが、どの人もしっかり書かれていて、その分、交差した時の喜び、楽しみが大きい。

営業締日間近で一億円の契約書を運ぶ社員、そしてそれを待つ社員、オーディション中に下剤を盛られた少女、別れ話のために待ち合わせをする男女、俳句サークルのため状況してきた年配の男性、推理サークルの幹事長の椅子を賭けて推理合戦を行う男女など、それぞれがそれぞれの目的を持って同じ場所に居合わせる。舞台は東京駅。誰かが誰かを探していて一同に会した時のパニックぶりは見ものです。映画など映像化しても楽しいかなと思いました。

群像劇はこれまで多く書かれていますが、あまり登場人物が多いと私の場合特に誰が誰なのかわからなくなったりするんですが、この作品では本当にひとりひとりのキャラクターがしっかり覚えられて、彼ら彼女らのひとつひとつのストーリーが気になるのです。例えば少女のオーディションの結果だったり、上京してきて待ち合わせ場所を間違ったおじいさんは仲間に出会えるのか、一億円の契約書は提出期限に間に合うのか、行方不明になったペットは?そして登場人物がみな主人公のようにそれぞれの事情を細かく書かれていてそれもまた魅力的なのです。帯に書かれていた“10代のうちに読んでおきたい”というのはよくわからなかったですが。全年齢向けのコメディでした。
2007.08.29 Wednesday 12:42 | posted by ソラチ
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三月は深き紅の淵を/恩田陸

評価:
恩田 陸
講談社
¥ 700
(2001-07)
恩田陸初心者からマニアまで楽しめる作品
恩田陸にはまれるかどうかの踏絵
自分だけのものにしたいがゆえに紹介が躊躇われる本
非常に長く感じました。だらだらと長いのではなく、もうパンパンに内容が詰まっている感じ。これはとても短時間では読めない。読書中、三大奇書を読んだ時のような満腹感がずっとありました。内容は決してそういうものではないのに。とても不思議でボリューム満点。

読書が趣味、それだけの理由で会社の会長の別宅に招待された鮫島は、屋敷内にあるはずだが十年以上探しても見つからない幻の本「三月は深き紅の淵を」の存在を知る。一人にたった一晩だけ貸すことが許された幻の本を巡る中編4つからなるミステリ。

第一話はそんな感じの「待っている人々」。一度読んだ人間を惹きつけてやまない、幻の本。第一章は様々なミステリが多く登場する、ミステリファンには垂涎もの。そんな本が本当に存在するのか。読者である私もその本が読める?わけがないだろうなあとか。色々考えながら読みました。本がどこにあるのかというミステリも面白い。

第二話は「出雲夜想曲」、ふたりの編集者がやはり「三月は深き紅の淵を」という幻の本の作者を夜行列車の中で推理する作品。第一話と共通項は「三月は深き紅の淵を」という本の設定のみらしい。これは予想はできるけれども面白い終わりでした。

第三話「虹と雲と鳥と」、ここにきて本作が作中に登場する「三月は深き紅の淵を」と同じ体を成していることがわかる。第一話で説明された第三章の内容と非常に近いものでした。それだけでしっかり完結していて好き。

そして第四話「回転木馬」、これが判断が難しい。作家が本の書き出しに悩んでいる話と、どこか学園に転校してくる少女の話、ある作家(書き出しに悩んでいる作家とは別人っぽい)が取材旅行をしている話などが並行して書かれる。エッセイかと思うような文章や、思想、感情をつらつら書いている部分などもあり、非常に複雑。ありえない事に、ところどころ読み飛ばしていたので、二人登場する作家が同一なのか分からなかったり結局何人の人間の話なのか、第四章の構成が理解できず、読後非常に後悔しました。それというのも学園パートが本当に面白いのです。後半ページを捲る手が止まらなくなり、物語にのまれてしまった感じ。また、散文的な部分も面白い内容なので、第四章はハラを決めてしっかり読むべきだと思いました。講談社から続編も出てるっぽいですが、今回と同じくらいのボリュームなら、心して読まなければ後悔しそうです。
2007.07.10 Tuesday 08:36 | posted by ソラチ
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Q&A/恩田陸

評価:
恩田 陸
幻冬舎
¥ 630
(2007-04)
ちょっと「浅い」んじゃないか?
これぞ小説。
普通の人に起こる恐怖。
これは面白いスタイルの小説でした。ひとつ残念な箇所があって★3つか★4つか迷うけど、楽しんだしamazonユーザレビューもおおむね好評のようですし。ただ、読むのにわりと時間がかかりました。通勤本だったからかな。続きを読みたい欲求は高まるストーリー展開なので文句なし。

住宅街にある大型ショッピングセンターで大規模な死傷事故が発生。死者69名、負傷者116名。死傷者の多くは客たちのパニックによる被害で、大勢の被害者の証言、防犯ビデオを検証しても原因不明。火事はあったのか、異臭騒ぎの真実は?ぬいぐるみを引き摺って歩く少女は?そもそも本当に事故なのか。Q&A形式で進行するミステリ。これはミステリだろう!!

想像以上に面白く読めたんですけどネタバレなしでは語れない。というわけで以下、ネタバレです。
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2007.06.27 Wednesday 01:43 | posted by ソラチ
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夜のピクニック/恩田陸

評価:
恩田 陸
新潮社
¥ 660
(2006-09)
期待しすぎた…
久々に学生時代を思い出した
心が解ける夜の魔法
想像以上に面白かった今作。面白い本には迷わず★5つつけてしまえ。↑のAmazonレビューでは★4つが妥当な様子。しかし、一気読みしてしかも読了から1日経ってなお面白いならいいだろう。たまに過大評価と思われるようなものもあっていいし。素直に面白かったし、懐かしかったし、青春だし、思い入れがなんとなくあるし。

2日かけて80キロを歩く―それは高校生活最後を飾る一大イベント・歩行祭。主人公・甲田貴子はある決意と賭けを心に秘めてイベントに挑む。それは三年間誰にも言えなかった秘密に関わる事だった。

ただ歩くだけの話なんです。それでも貴子を中心としたクラスメイトや友人たちの思い、誰かが放ったちょっとしたひと言に心を揺らして、気になる男の子のちょっとした言動に落ち込んだり喜んだり。死語ですが、“甘酸っぱい”青春小説です。しかもあまり大袈裟に恋愛を絡めない綺麗さ。そこが一番評価のポイントかもしれません。恋愛メインで書かれるときっと二流、三流になってしまったところを、上手い具合にはぐらかして気を持たせてしかも素敵に書き上げてあり、嬉しくてしょうがない。

さて、ここに登場する人たちは実に様々で、恋愛だったり家族だったり進路だったりに悩み、羨望、嫉妬、愛情、友情まさに悲喜交交が描かれている。こんなひといたとか、私の場合こうだったとか、懐かしく思い出すのに十分な要素を占めている。「明日は一緒に歩こうね」とか「明日は誰と走るの?」みたいな言葉たちも懐かしくほほえましい。恋愛感情とはきっと少し違った意味で気になる男の子に猛烈アタックをかける女の子。さらに、主人公に嫉妬して一緒に歩く友達にあえて「一緒に歩こう」みたいな言葉をかけたり。歳をとるとなんて馬鹿馬鹿しい、くだらないと思うことでも、この年代であれば大事で必死で、誰もが体験、経験したであろう思いを代弁してくれるこの小説は、主人公たちと大きくかけ離れた私のような世代でも楽しく読める。いや、ほんと楽しい。

そういえば、中学校、高校とわたしも意味なく長距離を歩かされるイベントを経験してきましたが、今作で“歩行祭”と呼ばれる素敵なイベントが、私の場合“スーパー遠足”という名前で記憶しています。スーパーですよ。色気がない。距離は確か10キロくらいで炎天下をむっとしながら歩いたり、短い距離だったら走っていた記憶が。ただ、夜歩くイベントは未経験で、多感な時期に普段なら「寝ろ」と言われる時間を友達と一緒に歩く。素敵ですね。教科書で見たのと同じじゃんと思いながら観光地を巡る修学旅行よりはずっとずっと価値がある体験かもしれません。何度でも思うけれどうらやましい。そして懐かしい。夏休みの一冊、見たいな感じで夏に読みたい一冊です。
2007.05.26 Saturday 23:04 | posted by ソラチ
・ 恩田陸 | permalink | comments(6) | trackbacks(1)
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